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大学入試改革 見切り発車を避けねば

 議論が生煮えのまま見切り発車するのは避けなければならない。文部科学省が2020年度からの実施に向けて検討を進めている大学入試の改革である。

 きのう公表した検討状況で、センター試験に代わる「共通テスト」の原案を示した。英語を民間の検定試験に全面移行し、国語と数学に記述式の問題を取り入れる。

 英語は、移行時期が異なる2案を並記した。A案は当初の20年度から、B案は併用期間を経て24年度から全面移行する。

 従来の「読む・聞く」に、「書く・話す」を加えた4技能を評価するためだという。それ自体はいいとして、民間の試験に全面的に頼るのはどうか。

 TOEICなどの試験は、留学やビジネスのための英語力を見るものが目立つ。ともすれば高校の英語教育を資格試験対策のような内容に変質させかねない。

 それと並んで心配なのは、受験機会の平等を保障できるかだ。会場が都市部にしかない場合、地方の受験生は民間の英語試験を受ける機会が限られる恐れがある。

 また、民間試験は受験料が2万円以上かかるものもある。近くに受験会場がなければ交通費も必要だ。住む地域や家庭の経済的な事情によって有利、不利の差が生じないよう、負担軽減などを図ることが大きな課題になる。

 記述式問題についても課題は山積している。国語の記述式は80〜120字の1種類に絞ったが、狙いとする思考力や表現力をどこまで問えるのか。

 記述式の回答はさまざまな観点からの評価があり得る。各大学の2次試験でなく共通テストで課す意味の見極めは十分でない。

 採点は民間業者に委託する。50万人規模の答案を短期間に正確に採点できるか。公平性をどう確保するのか。疑問が残る。

 大学入試改革は、政府の教育再生実行会議が13年の提言で「一発勝負、一点刻み」からの脱却を掲げたことに端を発する。中教審の議論を経て、文科省の専門家会議が昨年、大枠の方向を示した。

 入学者を選抜するのは大学である。自主性、独立性を踏まえれば、入試改革は本来、政府が前面に出て推し進めるべきではない。あくまで大学が主体となり、2次試験も含めて見直すのが筋だ。

 大学入試のあり方は高校の教育にも大きく影響する。20年度という年限を絶対のものとして拙速に進めてはならない。高校、大学双方の意見を聴き、丁寧な議論をすることが欠かせない。

(5月17日)

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