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「一帯一路」構想 覇権のてこにする懸念

 「シルクロード」と言えば聞こえはいいけれど、中身は漠然としている。中国が存在感を強めるための道具として利用することはないのだろうか。

 中国が推進する「一帯一路」と名付けられた現代版シルクロード経済圏構想である。先日、北京で国際会議が開かれた。29カ国の首脳を含め、約130カ国の代表が出席した。

 習近平国家主席は「保護主義に反対する」とし、世界経済のけん引役になる意欲を示した。

 自由貿易体制の発展に力を尽くすとの姿勢に異存はないが、保護主義的な通商政策を掲げるトランプ米政権をけん制する意図があったのは明らかだ。各国に投資することで味方に付け、中国主導で新たな世界秩序を構築しようとの野心すら感じる。

 そんな疑念に対し、中国は意図や具体的な事業内容を丁寧に説明する責任がある。

 一帯一路は中国を拠点に、中央アジアから欧州に続く「シルクロード経済ベルト」(一帯)と、東南アジアから中東を通り、欧州へ至る「21世紀の海上シルクロード」(一路)で構成する。

 習氏が4年前に提唱した。中国主導で設立したアジアインフラ投資銀行などを通じて各国に港湾や高速道路などを整備する。これまでの累積投資額は5兆7千億円を超え、今回新たに12兆8千億円の拠出を表明。発展途上国などが強い関心を示した。

 首脳会合の共同声明では自由貿易の重要性を確認し、平和や民主主義、法の支配、人権などの前進もうたった。トランプ米政権が後ろ向きな地球温暖化への取り組み強化も決意している。

 声明の趣旨は理解できる。問題は、旗振り役である中国の強権的な政治姿勢だ。国内では言論の自由や人権が抑圧されている。南シナ海では領有権を巡り関係国の訴えを無視して一方的に実効支配を拡大している。

 中東からの原油を輸送する海上交通路に位置する国々の港湾整備も支援している。カネのばらまきと軍事力でにらみを利かせる戦略が鮮明になってきた。

 中国は、一帯一路で他国に圧力をかけ、覇権拡大に利用するのでは、と懸念する声もある。

 開かれた経済のために機能するか、ばらまきに終わることはないか。また、参加国にとってウィンウィン(相互利益)になるか。温暖化など地球規模の課題解決に真剣に取り組むか。論点は多い。厳しく見ていく必要がある。

(5月18日)

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