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松本城の天守のしゃちほこを支えているのは長さ2メートル余、幅約30センチのヒノキの芯(しん)木だ。棟木に取り付け先端をしゃちほこに差し込んである。そこに毛筆で名前が記されているという。「昭和の大修理」で現場作業の中心になった人々だ

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1950(昭和25)年から5年の歳月と延べ6万人の人手をかけた。天守を解体して江戸時代の姿に復元。基礎を鉄筋コンクリートにするなど大規模な難工事だった。戦後、文部省が実施した初めての国宝保存事業で姫路城の修理などの先駆けになった

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それ以来の規模になりそうという。大地震に備える補強である。耐震診断の結果、糸魚川―静岡構造線断層帯を震源とする震度6強〜7の地震を想定すれば天守の一部が倒壊するとの判定を受けた。数年かかるとみられる工事中は入場を制限するなど観光への影響が避けられまい

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危機を住民の力で乗り越えてきた城だ。明治の初め、競売にかけられ民間の手に渡ったが、市川量造ら地元住民が買い戻して保存した。土台の腐食で傾いた天守を修繕した「明治の大修理」は、旧制松本中校長小林有也(うなり)の呼びかけで住民が資金を寄せた

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先週、松本古城会の会員ら80人がクルミの実とこぬかを布でくるんだ「たんぽ」で床磨きをした。春から秋に毎月2回行うボランティア作業だ。会は活動を始めて51年。世界文化遺産登録に向けた取り組みも重ねる。先人から受け継いだ心意気である。「大修理」を乗り切るのに頼もしい。

(5月19日)

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