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憲法の岐路 衆院審査会 首相に引きずられるな

 衆院憲法審査会が議論を再開した。安倍晋三首相が2020年に新しい憲法を施行したいと表明してから初めての開催である。

 今後、首相の意向に沿う形で議論が進められる心配が強い。これまで以上に厳しく見ていかなくてはならない。

 約1カ月ぶりの再開だ。この日のテーマである「国と地方の在り方」に加え、首相の発言を巡って議論を交わしている。

 首相は憲法記念日の3日、自民党総裁としてのビデオメッセージで改憲の時期の目標を示すとともに、9条への自衛隊明記など具体的な項目にも踏み込んだ。

 改憲の発議に向け、議論の加速を促した形である。発議権は国会にある。立法府への介入との批判が出るのは当然だ。

 これからの議論をどう進めていくのか、審査会の在り方が問われる。森英介会長(自民)は「主体性を持って与野党で丁寧な議論を積み重ねる」とし、合意形成を重視する姿勢を見せた。口先だけであってはならない。

 首相発言について民進党は「立法権を著しく侵害する」とし、審査会として撤回を求める決議を主張した。これに対し、自民は「党総裁としての考えを党に向けて示した。何ら問題はない」と反論している。

 憲法改正の是非を問う国民投票と国政選挙を同時に行う可能性に首相が言及するなど、政府側は投票の在り方についても発言している。自民の委員も立法府の一員として、首相に自重するよう迫るのが筋ではないか。

 審査会に先立つ幹事会では、自民の中谷元氏が「審査会の具体的スケジュールは各党各会派の協議で決定する。首相発言には縛られない」と強調した。

 中谷氏や森氏の発言とは裏腹に自民は前のめりの動きを見せている。早ければ年内にも党としての改憲案を取りまとめる方向で調整に入った。連立を組む公明党とも協議に入る考えだ。

 自民の二階俊博幹事長と保岡興治憲法改正推進本部長は、推進本部の態勢を強化する方針で一致した。党内には「来年の通常国会に案を出せればベスト」との声もある。「日程ありき」で進めるのではないか。

 国民の権利を守るために国家権力を縛るのが憲法だ。審査会が首相の悲願の実現に向けて突き進むようでは責任を果たせない。

(5月19日)

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