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核禁止条約 草案をさらに磨き採択へ

 国連で交渉が始まった核兵器禁止条約の草案が公表された。

 草案は広島や長崎の被爆者に言及して核兵器の非人道性を強調。その上で、加盟国に使用や開発、保有や輸送などの禁止を義務付けている。

 米軍による日本への原爆投下から70年以上を経て、核兵器禁止を明記した国際条約のたたき台ができた。その意義は大きい。

 条約の実現は被爆者らの長年の悲願である。交渉参加国は草案について議論を深め、実効性のある内容にした上で採択に向けて力を尽くしてほしい。

 約100カ国が参加して3月下旬に交渉が始まって以来、議長国のコスタリカを中心に条約の草案づくりを進めてきた。来月15日から7月7日まで2回目の交渉が開かれる。草案について論議し、採択へ進むとみられる。

 前文には「核兵器の使用で犠牲になった人々(HIBAKUSHA)の苦しみに留意する」との文言を盛り込んだ。被爆者の平均年齢が80歳を超える実情を踏まえ、一刻も早く条約を実現したいとの思いがにじむ。

 草案は核兵器に厳しい網を掛けつつ、核拡散防止条約(NPT)体制の重要性も強調する。

 NPTは核保有を米国やロシアなど5カ国に限定し、核軍縮の義務を課している。現行の核不拡散の枠組みから外れないとの意思を示したのは、反対国の姿勢を軟化させる狙いが感じられる。

 米ロといった核超大国は条約に背を向け続けている。米国の「核の傘」に守られている日本なども核軍縮を巡って国際社会が分断する、として交渉には参加していない。条約はNPT体制を損なうと訴える国もある。

 草案には最大の課題である核保有国の参加をどう促すかに関して具体策が見当たらない。

 実効性のある中身になるかどうか予断を許さない。専門家によると草案づくりを急いだことで、今後論議を呼びそうな甘い面が散見されるという。

 例えば、条約の発効要件を40カ国の批准で済むとした点だ。発効しやすくなってはいるが、国際的なルールとして重みを欠くことになりかねない。核廃絶に必要な検証措置や違反国に対する規定なども詰める必要がある。

 日本は世界で唯一の戦争被爆国であり、条約づくりが具体化したのは被爆者らの努力のたまものといえる。草案を肉付けし、核廃絶を前へ進める起爆剤にしたい。正念場はこれからだ。

(5月29日)

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