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憲法の岐路 自民本部始動 首相直轄になる心配

 自民党の憲法改正推進本部が新しい体制による幹部会の初会合を開いた。党としての改憲案をまとめる作業のスタートだ。

 幹部会には高村正彦副総裁、下村博文幹事長代行、古屋圭司選対委員長らが新しく加わった。安倍晋三執行部の中枢を担うメンバーである。本部顧問には二階俊博幹事長ら党三役が就任した。推進本部が首相直轄になったような印象を受ける。

 改憲案をまとめる作業が首相の言いなりで進まないか、懸念は強まるばかりだ。

 国会で改憲原案を審議する衆参の憲法審査会はこれまで、前身の憲法調査会の伝統を踏襲して、少数会派にも発言の機会を保障してきた。与野党を通じた合意形成を目指すためである。自民党の推進本部も審査会での議論の積み上げを基本的には重視してきた。

 その姿勢が、首相には歯がゆく映っていたようだ。首相は国会審議でも再三、審査会論議の加速を呼び掛けている。

 自民党の体制の変更は国会にも影響するだろう。数を頼んだ運営にならないか心配だ。

 顧問には石破茂元幹事長も名を連ねた。石破氏は党内で首相と一線を画す数少ない議員の一人だ。首相が5月3日の憲法記念日に唐突に独自の改憲案を打ち出した時は「やり方として正しいとは思わない」と述べていた。

 石破氏も取り込んだのは、異論や反対論を推進本部の中に封じ込めて党外に発信させないためではないか。自由闊達(かったつ)な議論はますます影を潜めそうだ。

 これから注目されるのは改憲案の中身だ。首相は憲法記念日には、戦争放棄を定めた9条1項、戦力不保持をうたった同2項を維持しつつ、自衛隊を明文で書き込む考えを述べていた。

 自民党が2012年に決めた改憲草案は2項の書き換えと「国防軍」創設をうたっている。首相との間には根本的な違いがある。簡単には越えられない。

 推進本部の保岡興治本部長はきのうの会合で、年内をめどに改憲案をまとめる考えを示した。忙しい日程である。

 推進本部がこれまでの党内論議をなかったことにして首相の意に沿った案をまとめるようでは、改憲を自己目的にしていることを自分から白状するようなものだ。推進本部のこれからに厳しい目を注ぎ続けなければならない。

(6月7日)

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