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憲法の岐路 自民の4項目 審査会の議論を妨げる

 9条への自衛隊明記など、自民党の憲法改正推進本部が掲げた改憲4項目は冷静な憲法論議の妨げになる心配が大きい。前向きに受け止めるのは難しい。

 推進本部が先週、党執行部メンバーらを加えて再出発したのに合わせて打ち出した項目である。年内にまとめる予定の党改憲案に盛り込み、衆参憲法審査会での議論の柱にしたい考えだ。

 9条への自衛隊明記に加えて高等教育無償化、緊急事態条項、参院の「合区」解消を盛り込んだ。自衛隊明記と教育無償化は安倍晋三首相が憲法記念日のビデオメッセージでも触れていた。

 4項目はどれも審査会のテーブルに載せるには問題をはらむ。

 首相は憲法記念日メッセージでは、戦争放棄をうたう9条1項、戦力不保持を定めた同2項を維持しつつ、自衛隊の存在を書き込む考えを述べていた。

 今の自衛隊は2年前に制定した安保法制により集団的自衛権が行使できるようになっている。日本が攻撃されていなくても、密接な関係にある国が攻撃されたとき反撃する権利である。専守防衛の考えと合わない。書き込めば9条の空洞化はさらに進む。

 高等教育の無償化には、▽国民の理解が得られるか▽4兆1千億円ともされる財源をどう確保するか―といった問題がある。

 そもそも、無償化しようと思うなら憲法を変える必要はない。普通の法律の改正でできる。

 緊急事態条項には行政権力を肥大化させる心配が伴う。改憲による「合区」解消は衆参の在り方の抜本見直しなしには難しい。

 仮に自民党が4項目を審査会に提案した場合、議論が紛糾、停滞するのは目に見えている。

 審査会はこれまで、与野党が一致して改憲発議する形にするために、合意を丁寧に探る姿勢を大事にしてきた。

 最近になって自民党内に気になる動きがある。多数決を主張する声が出始めているのだ。

 例えば衆院の審査会委員を務める古屋圭司選対委員長の発言だ。保守系議員の集まりで、「個人的な意見」と前置きして「どの項目を発議するかについては採決も必要だ」と述べている。

 自民が4項目を掲げ、推し進めようとする場合には、審査会が数の論理に支配される場になりかねない。姿勢を厳しく見ていかなければならない。

(6月14日)

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