長野県のニュース

湾岸地域混乱 火の粉まき散らす米政権

 中東の湾岸地域に混乱が広がっている。サウジアラビアなどのアラブ諸国が、ペルシャ湾岸の産油国カタールと断交すると一方的に通告したためだ。

 イスラム教スンニ派のサウジとシーア派のイランは宗派の違いや覇権を巡って対立を深め、昨年外交関係を断った。シリア内戦も長期化している。中東情勢がより混迷する恐れがある。

 断交の理由は、カタールのタミム首長がイランを支持する発言をしたほか、テロ組織を支援しているというものだ。カタールは根拠のない主張と否定したが、サウジは反発を強めていた。

 同じ日にアラブ首長国連邦やバーレーン、エジプトなどが断交を発表し、サウジと関係が深い国々の間でも同調する動きが広がった。国境を接するサウジは交通や物流を遮断し、カタールを孤立させようとしている。

 なぜ、このような事態を招いたのか。石油や天然ガスに恵まれたカタールはサウジと同じスンニ派の国だ。アラビア半島の6君主国でつくる湾岸協力会議の一員としても緊密な関係だった。日本にとっては液化天然ガスの主要供給国になっている。

 一方、独自外交にも力を入れてきた。一部のガス田をペルシャ湾を挟み対岸のイランと共有するなどしており、サウジと確執が深まっていたとされる。

 そんな微妙なバランスを崩したのがイランに露骨な敵意を示し続けるトランプ米大統領である。先月の中東訪問ではイランと敵対するサウジを真っ先に訪れ、約12兆円相当の武器を輸出することで合意。中東でイラン包囲網を再構築する姿勢を見せた。

 サウジが米国の後ろ盾を得たと考え、強硬手段に打って出たとしても不思議ではない。

 カタールには1万人近い米兵が駐留し、過激派組織「イスラム国」掃討の拠点となっている。トランプ氏は湾岸諸国の団結が必要としながら、カタールを批判して混乱に拍車を掛けている。

 両国関係がこじれれば中東が不安定化して各地に火の粉をまき散らすことになりかねない。

 また、混乱が長引けばエネルギー供給に支障が出るなど、世界経済が混乱することもあり得る。

 ロシアとの不透明な関係で、米国民がトランプ氏に向ける目は厳しさを増している。外交で目立って求心力を回復する狙いなのだろうが、中東政策は場当たり的で危うい。責任を持って湾岸地域の混乱収拾に当たるべきだ。

(6月15日)

最近の社説