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学習指導要領 「統制」に近づかないか

 教育は政治権力からの独立を保つことが何よりも大事だ。その根幹が揺らぎ、国による統制の色合いがさらに強まっていかないか、心配になる。

 小中学校の次期学習指導要領の解説書を文部科学省が公表した。小学校社会科の指導要領に記載された自衛隊について、「国の平和と安全を守っていることに触れる」と明記した。

 領土に関しても詳述している。小中とも、竹島や尖閣諸島は日本の「固有の領土」であり、その立場は「歴史的にも国際法上も正当」と教えるよう記載した。政権の姿勢に沿った内容である。

 次期指導要領は2020年度以降に実施される。改定に伴い、教員向けに中身を詳しく説明するのが解説書だ。学校の授業のほか、教科書作成の指針になる。

 竹島、尖閣諸島をめぐっては、それぞれ韓国、中国が領有権を主張し、日本政府と対立している。政府の見解とともに相手国の考え方も知らなければ、一面的な理解にしかならない。

 竹島は韓国が不法に占拠している。尖閣は日本が有効支配し、領有権の問題は存在しない―。解説書はそう記述する。韓国、中国側の主張には触れていない。

 これでは、政府見解を絶対のものとして、敵対心を抱かせることになりかねない。なぜ対立が生じ、どうすれば平和的に解決できるのか、子どもたちが主体的に学び考えることにつながらない。

 自衛隊に関しては、安全保障関連法による任務拡大で、憲法9条の平和主義が空文化する懸念がある。中学校社会科の解説書は憲法改正の手続きに初めて触れた。そこにも政治的な背景はないか。

 既に教科書検定で、政府の立場に沿った記述を求める傾向は顕著になっている。今回の解説書が指針となることで、教科書は一段と国定に近づく恐れがある。

 学習指導要領は学校教育の大枠の基準を示すものだ。ところが、法的拘束力を持つと位置づけられ、現場を強く縛ってきた。それが画一化にもつながっている。

 教育行政の役割は本来、基盤や条件を整備することにある。教育内容への干渉はできる限り避けるべきだ。政府の考え方を押しつけることは教育をゆがめる。

 来年度以降、道徳が教科に格上げされる。教育勅語を学校で教材として用いることも政府は容認した。教育への国の介入が進む先に何があるのか、目を凝らす必要がある。思想統制に利用された歴史をあらためて思い起こしたい。

(6月26日)

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