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憲法の岐路 首相の姿勢 前のめりの危うさ一段と

 改憲に向け安倍晋三首相が前のめり姿勢を強めている。

 森友・加計学園の問題などで政治への信頼は大きく損なわれた。このまま改憲に突き進むようでは国民の理解は得られない。首相は立ち止まって批判の声と向き合うべきだ。

 首相は5月3日の憲法記念日に改憲派の集会と読売新聞インタビューで、東京五輪が開催される2020年に改正憲法の施行を目指す考えを述べていた。

 東京都議選の告示翌日の6月24日には講演で、秋の臨時国会の憲法審査会に党の改憲案を提出する考えを表明した。改憲手続きの前倒しである。早ければ18年の通常国会での国会発議と同年中の国民投票が可能になる。

 そして今月4日付の毎日新聞インタビューで、臨時国会に改憲案を出す方針は「変わっていない」と述べた。都議選で自民党が大敗したにもかかわらず、早期改憲を目指す姿勢を鮮明にした。

 都議選の敗北を受け、首相の足元では風向きが微妙に変わる気配が見える。5日の党憲法改正推進本部の会合では丁寧な議論を求める声が上がった。

 連立を組む公明党の山口那津男代表は5日、「憲法は政権として取り組むものではない」と述べている。小池百合子都知事と連携して都議選に勝ったことで、首相と自民党に対し強気で向き合う自信が生まれたようだ。

 首相が改憲への積極姿勢を崩さないのは、改憲勢力が国会発議に必要な3分の2を衆参で保っているうちに国民投票に道を開きたいと考えているからだろう。

 今の状況で手続きを前に進めていいか。答えは無論ノーだ。

 首相が憲法記念日に打ち出した9条への自衛隊明記はこれまで自民党内で議論されたことがない。「国防軍」保持をうたう2012年の改憲草案が今も党の公式文書になっている。

 改憲原案を検討する国会の審査会の審議も煮詰まっていない。衆院の審査会は先の国会で7回開催したものの9条は議論していない。参院審査会は通常国会では1回も開かれなかった。

 そんな中で首相が臨時国会への改憲案提出を目指すのは議論の土俵の破壊につながる。認めるわけにいかない。通常国会で与党が見せた問答無用の審議姿勢が憲法問題で繰り返されるようでは、国の針路が危うくなる。

(7月7日)

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