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南シナ海問題 放置できない中国の姿勢

 南シナ海を巡り、国連海洋法条約に基づく仲裁裁判所が中国の主権主張を否定してから1年たった。

 これを無視する中国の振る舞いは放置できない。判断を受け入れるよう各国は厳しく迫る必要がある。

 中国は南シナ海に「九段線」と称する独自の境界線を引いて主権を主張し、フィリピンやベトナムなどと争ってきた。岩礁を埋め立てて人工島を造成し、滑走路を建設したりしている。

 仲裁手続きはフィリピンが2013年に申し立てた。昨年示された判断は「歴史的に、この海域や資源を排他的に支配していたとの証拠はない」と中国の主張を明確に退けた。これに対し、中国は当初から「紙くず」と批判し、受け入れを拒んでいる。

 この間、中国に好都合な方向へ状況が変わっている。仲裁判断が出る直前、フィリピンでドゥテルテ大統領が就任した。昨年10月に訪中したドゥテルテ氏は習近平国家主席との会談で南シナ海問題を事実上棚上げし、巨額の経済援助を取り付けている。

 仲裁判断から丸1年の12日、中国外務省の副報道局長は記者会見で「フィリピンとの関係は全面的に回復した」と強調した。フィリピン外務省も「近隣国との良好な関係に基づいて紛争を解決すべきだ」との声明を出している。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)とは5月、南シナ海の紛争回避を目的とする「行動規範」策定に向けた枠組みに合意した。法的拘束力のあるルール作りは長年の課題だ。合意は歓迎できる。とはいえ、それで仲裁判断の拒否が正当化されるわけではない。

 中国による軍事拠点化は着々と進められ、南沙(英語名スプラトリー)諸島の全ての人工島に大型防空設備が配備されたとみられている。海底観測網を整備する計画も報じられた。他国の艦船や潜水艦の動きをつかむセンサーが設置される可能性がある。

 このままでは国際的な司法判断が本当に「紙くず」になる。国連安全保障理事会の常任理事国として許される行動ではない。

 米国のトランプ政権は南シナ海で「航行の自由」作戦を続けているものの、中国に仲裁判断の受け入れを求める姿勢は弱い。北朝鮮の核・ミサイル問題で連携する必要があるにせよ、主張すべきは主張してこそ責任ある対応だ。

 菅義偉官房長官は12日「当事国は仲裁判断に従う必要がある」と述べた。日本政府も働き掛けを強めなくてはならない。

(7月14日)

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