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電通事件 労災の深層に迫りたい

 電通の違法残業事件が法廷で審理される。

 検察は労働基準法違反の罪で電通を略式起訴していた。東京簡裁は、事実関係に争う点がなく比較的軽い事件に適用する略式命令は見合わないと判断したようだ。

 過重労働の深刻な実態を浮き彫りにした事件だ。残業が常態化している企業風土の改善につながるよう、労務管理の問題点を明らかにしてもらいたい。

 電通の新入社員だった高橋まつりさんが都内の社宅で身を投げたのは2015年12月。労働基準監督署は、うつ病発症前の残業時間が月105時間に達していたとし労災と認定した。

 厚生労働省は、異例の態勢で電通の本支社や子会社の立ち入り調査、家宅捜索に臨んだ。検察は、高橋さんの当時の上司ら幹部個々については「悪質性は高くない」と結論付け、起訴猶予とした。

 電通が罰金を払って終結か―とのもどかしさが残った。

 労基法は原則、労働時間を1日8時間、週40時間と規定する。超過して働かせるには、労使協定が要る。電通の協定は「最長月70時間」まで残業できるとし、この上限を超えて働くことができる「特別条項」も加えていた。

 遺族側の調べだと、高橋さんは15年10月25日の日曜日午後7時27分に勤務を開始し、53時間も続けて働いていた。なのに、10月の残業申告は69・9時間だった。

 労使協定は形ばかりで、管理職は異常な残業を当然としていたのではないか。残業時間の過少申告も慣例だったのだろう。現に、30人以上もの社員が月100時間以上も減らして申告していたことが確認されている。

 高橋さんの遺族が訴えるパワーハラスメントの詳細もはっきりさせなければならない。

 電通では過去にも若手男性社員が過労自殺、過労死している。労基署から繰り返し是正勧告を受けていただけに「あしき慣習」の根深さがうかがえる。

 昨年度の労災認定は過去最多の498件で、過労自殺は84件、過労死も107件に上った。パワハラの相談数も増えている。

 電通に限らない。企業にはびこるずさんな労務管理に警鐘を鳴らす上でも、今度の裁判は重要になる。事の深層に迫る公判となるよう検察も協力してほしい。

 残業時間を最大「月100時間未満」とした政府の働き方改革実行計画では再発防止はおぼつかない。関連法案提出までの練り直しを改めて求める。

(7月14日)

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