長野県のニュース

斜面

今年の4月、九州を訪ねた折に大分県日田市から福岡県朝倉市を車で走った。今度の豪雨で被害が出た地域である。道筋には製材所や木製品の工場が多い。どの工場も「日田杉」と書いた看板を誇らしげに掲げていた。日本を代表する林業地の一つだ

   ◆

被災地の写真を見ると、白い木肌をあらわにした流木が家の周りや道路にごろごろと積み重なっている。土砂と一緒に流れ下る間に樹皮がむけたのだろう。樹木は橋桁に引っ掛かって川をせき止め、水をあふれさせた。ため池に流れ込んで堤を決壊させた

   ◆

「木は根こそぎになっている。表層崩壊が起きたのは間違いない」。信州大農学部で緑化工学を教えた同大名誉教授、山寺喜成さんの見方だ。戦後の植林で効率を優先し根が地中深く伸びない方式を採用したため、災害に弱くなって樹木もろともごっそり崩れ落ちたというのだ

   ◆

九州の北部には花こう岩が風化した「まさ土」が分布する。土の粒子同士くっつく力が弱く、大量の雨が降るとぼろぼろと崩れる。植林された樹木にも表土を支える力がない。同じ「まさ土」地帯、南木曽町と広島県で3年前に起きた災害と似た構図が繰り返された

   ◆

九州の山林は1991年秋の台風19号でも甚大な被害を受けている。阿蘇山で最大瞬間風速60・9メートルを記録した台風だ。営々育ててきた日田杉もなぎ倒され、へし折られた。痛手からようやく立ち直ってきた時の被災である。負けないでほしいと願うばかりだ。

(7月16日)

最近の斜面