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ファイア・アントが害虫だというのは、どこまで本当なのか―。米国の生物学者レイチェル・カーソンは1962年の著書「沈黙の春」で疑問を呈した。ファイア・アント。日本語では火蟻、最近ニュースで取り上げられているヒアリだ

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「人体に害になるというのも、かなり尾ひれのついたもの」と記す。南米から入ったヒアリが広がる中、農務省が進める薬品での撲滅計画を批判したくだりだ。生態系への悪影響などを指摘した。そのカーソンも今なら書き方が違ったかもしれない

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国際自然保護連合が選んだ「世界の侵略的外来種ワースト100」にも名を連ねる強毒アリである。刺されると、やけどのような激しい痛みを覚える。場合によってはアレルギー反応で死に至る。攻撃性が強く、爬虫(はちゅう)類や小型哺乳類に集団で襲いかかり、捕食することも知られている

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5月に兵庫県尼崎市で初めて見つかって以降、名古屋や大阪など各地で確認が相次ぐ。1日に2千個の卵を産む女王アリもいた。横浜港では舗装面にできた亀裂の中から500匹の働きアリや、それぞれ100匹超のさなぎと幼虫が確認されている

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米国では農務省を中心に環境に優しい高価な農薬や天敵を使った防除が辛抱強く行われているという(「アリの社会」東海大学出版部)。いったんすみ着いてしまったら全面的な駆除がいかに困難か。はるばる海を渡ってくるアリには気の毒ながら、日本への定着は何としても食い止めたい。

(7月17日)

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