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性被害条例 検証する機関の新設を

 深夜に18歳未満の少女と一緒にいたというだけで摘発された男性が自殺した。「相手の嫌がることは一切していない」との言葉を残して。

 施行から1年たった県の「子どもを性被害から守るための条例」にある処罰規定は妥当なのか。捜査は適正に行われたのか。それを検証できる機関が存在しないことが浮き彫りになった。

 条例の処罰規定は二つある。18歳未満に対する威迫、欺き、困惑による性行為と、保護者の委託、同意がなく18歳未満を深夜(午後11時〜午前4時)に連れ出す行為に対してだ。

 いずれも恋愛関係であっても処罰の対象になりかねない。子どもの自由を過度に制約する、冤罪(えんざい)を生むなどの批判があった。それを押し切って成立した条例だ。

 罰則を含めた全面施行を前に県は摘発例を「子ども支援委員会」で検証すると決めた。阿部守一知事は「運用状況をしっかり検証したい」と話していた。

 そもそも子ども支援委員会は、この条例の検証のために設置されたのではない。3年前に制定された「県の未来を担う子どもの支援に関する条例」に基づく。いじめや体罰など子どもに対する人権侵害について調査・審議し、知事や教育委員会に勧告する。

 もちろん性被害についても適切なケアや支援を受けられたか、子どもの人権の観点から検証することは大切だ。ただ、5人の委員は児童精神科医や元児童相談所長など子どもに関わる専門家が中心。「罰則の運用や捜査が適切だったかどうかを検討できるメンバーではない」(副会長の中嶋慎治弁護士)のが実情だ。

 実際、委員会は深夜外出制限違反の2事例について2回会合を開いたが、罰則の妥当性などは検討されていない。

 知事は今月7日の記者会見で捜査の妥当性については「県警に言ってもらう話」と答えた。違反を摘発した県警が自ら捜査の妥当性を検証するなどあり得ない話だ。

 処罰規定に反対してきた県弁護士会は、条例の全面施行時にこんな会長声明を出している。

 起訴、不起訴にかかわらず、処罰規定違反の容疑で捜査権を行使した全ての事案について内容に踏み込んで乱用がないかをチェックすべきだ―。

 県は条例をつくるとき、法律の専門家を集めてモデルを作成した。事後の検証も同様に専門家の新組織を立ち上げるべきだ。条例の存廃を含めて検討したい。

(7月17日)

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