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戸籍の公表 問われる蓮舫氏の判断

 なぜ戸籍を開示して“身の証し”を立てなくてはならないのか。理解に苦しむ。

 民進党の蓮舫代表が自身の戸籍謄本の一部を公表した。日本国籍を選択し、「二重国籍」を解消した証拠を示すためだという。

 戸籍には出自が記され、深刻な差別に結びついてきた歴史がある。蓮舫氏個人の問題にとどまらず、開示して出自を明かすよう求める圧力が強まり、排外的な風潮を助長しないか心配だ。

 昨秋の党代表選の際、台湾籍との「二重国籍」を指摘された。その後、日本国籍を選ぶ手続きを取ったと説明したが、証拠がないとネット上で批判が続いていた。ここへきて党内からも、東京都議選の敗因の一つだとして戸籍の公表を求める声が上がった。

 一方で、反対する意見は党内にも強かった。蓮舫氏自身「本来、戸籍は開示すべきではない」「前例とすることは断じて認めない」と述べている。

 ならばなぜ反対を押し切って公表に踏み切ったのか。野党第1党の代表として政権に説明責任を求める立場であることを勘案したというが、それとこれとは分けて考えるべきだろう。

 戸籍はかつて公開が原則とされ、結婚や就職の際の身元調査に利用されて、被差別部落出身者らの重大な人権侵害につながってきた。公開や利用が制限されてからも戸籍情報の不正取得はやまず、原則非公開に転換したのは2008年のことだ。

 差別は根深く残っている。街頭やネット上で排外的なヘイトスピーチもやまない。「戸籍を見せられないのは、やましいところがあるからだ」といった見方が広がれば、出自による差別は防げない。戸籍は開示を要求すべきものではないし、応じるべきでもない。

 そもそも二重国籍であることはそれほど大問題なのか。国際化が進み、外国で生まれたりして二重国籍になることは珍しくなくなった。多くの国が二重国籍を認めている。欧州には、どちらかを選べと求めないことなどを定めた国籍条約がある。

 日本にも70万〜80万人いるといわれている。具体的な弊害が生じているわけではない。むしろ、複数の国籍を持つ人は社会に多様性をもたらす存在でもある。

 国籍法の「国籍唯一の原則」を見直すときではないか。多様な価値観と人権が尊重され、誰もが排除されない社会の実現を綱領にうたう民進党は、その議論をけん引する役割こそ果たすべきだろう。

(7月20日)

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