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語る 失った仲間のために 御嶽山噴火訴訟の口頭弁論

弁護団と共に記者会見に臨み、被災当時の状況を振り返る原告男性(左から2人目)=19日、松本市弁護団と共に記者会見に臨み、被災当時の状況を振り返る原告男性(左から2人目)=19日、松本市
 2014年9月の御嶽山噴火災害の遺族が、気象庁の噴火警戒レベル判定や県の観測態勢に怠りがあった―として国と県に損害賠償を求めた訴訟の第3回口頭弁論が19日、地裁松本支部(松山昇平裁判長)であり、別途、災害で負傷した県内の男性2人が国と県を同様に訴えた訴訟が併合審理された。災害でそれぞれ一緒に登った仲間を亡くした2人。匿名を条件に行った記者会見で被災当時の状況を振り返り、訴訟を通じて国、県の対応が検証され、火山防災が充実されることを強く願った。

 仲間1人を亡くした原告男性は噴火後、報道取材を断ってきた。原告側弁護団によると、「原告になった自身の思いを伝えたい」と、2日前に急きょ記者会見で体験を語ることを決めたという。

 男性はこの日、原稿を手に緊張した表情で語り始めた。亡くなった仲間を含む計3人で登り、山頂の剣ケ峰で写真撮影をしていると「ゴゴゴ…」と低い音が聞こえ始めた。空を見上げると黒煙が立ち上り、細かい砂がパラパラと落ちてきた。近くの建物の軒下付近に逃げ、しゃがみ込んだ直後、辺りは暗闇に包まれた。

 「バン、バン」とたたきつける噴石に、「頭を守りましょう」と周囲に呼び掛け、自身もザックで頭を覆ったが、左肩甲骨を折り、頭を数針縫う重傷を負った。熱風も襲い「駄目かもしれない」と思ったという。

 周囲の人たちに火山灰に肩まで埋まった自身を掘り起こしてもらうと、後頭部を負傷して呼び掛けに応じない仲間を灰の中から掘り出そうとしたが、がれきや遺体が積み重なり、足を引き抜くことができなかった。「泣く泣く友人を残し下山することにした」。男性は悔しそうに語った。

 男性は噴火前、火山性地震が増加していたことを知らなかったという。気象庁が噴火警戒レベルを入山規制を伴うレベル2に引き上げていれば「多くの登山者は登山を中止していた」と強調。県が山頂の地震計を故障したままにしていたことも「いつ起こるか分からない火山性地震の観測のために絶えず観測は行わなければならないはずだ」とした。最後に、「訴訟を通じて国と県の対応を検証し、今後の火山防災に生かしてほしい」と訴えた。

 会見では、仲間3人を亡くし、完治まで1年余りかかるけがを負ったもう1人の原告男性も思いを語った。遺族の思いに共鳴し原告になる決意をしたという。気象庁が噴火前に噴火警戒レベルを1に据え置いた経過を訴訟で明らかにし「亡くなった仲間の墓前に報告したい」と語った。

(7月20日)

長野県のニュース(7月20日)