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障害者と生きる社会とは 相模原殺傷事件あす1年

渡米前の井出今日我さん。ワシントンで着るTシャツを示し、事件を機に考え続けていることを語った=上田市の自宅渡米前の井出今日我さん。ワシントンで着るTシャツを示し、事件を機に考え続けていることを語った=上田市の自宅 勤務するNPO法人の事務所で、パソコンに向かう今村登さん=東京都江戸川区勤務するNPO法人の事務所で、パソコンに向かう今村登さん=東京都江戸川区
 相模原殺傷事件をきっかけに、社会に潜む障害者への差別意識を考え続けている県内関係者がいる。上田市の井出今日(きょう)我(が)さん(27)と、東京都内のNPO法人理事長の今村登さん(52)=飯田市出身=で、ともに車いすで暮らす。殺人罪などで起訴された植松聖被告が「障害者はいなくなればいい」と供述したことに衝撃を受けた。事件発生1年を機に、米国の首都ワシントンと横浜市で、障害がある人とない人が共生する社会づくりを訴える。

 「人ごとじゃない。自分が1回殺されたようだ」

 全身の筋肉が萎縮する進行性の筋ジストロフィーを患う井出さんは事件を思うと、そんな恐怖に襲われる。

 事件直後、SNSで「勝手に人の命の価値決めるな」とつづった。1カ月後、事件への関心が「日に日に薄れていく」との焦りも書いた。被害者の匿名報道にも強い違和感を覚え、「社会全体の問題では」と思う。昨年12月、やまゆり園を訪ねて献花した。

 5歳で筋ジストロフィーと診断され、12歳から車いすで生活する。母の介助を受けてきたが、大卒後の2015年から事業者に24時間介助を依頼し、今は1人暮らし。「自分も同じように施設にいたかもしれない」と被害者と自らを重ねている。

 「社会に必要な理解がまだ足りない」との思いが拭えない。例えば介助者と一緒にいる時、多くの人は介助者に話し掛ける。列車に乗る時、スロープの用意を駅員に頼むと、駅員は介助者と話すことが多いという。「自分に聞いて!」と強く言ったことがある。

 「見た目で判断しないでほしい。体が動かないだけで、あとはみんなと同じ」と強調する。「小中学校のうちから、障害者と障害のない人が交流することが大切」と話す。

 昨年、障害者の「自立」について当事者の立場で支援するセンターを上田市に立ち上げ、周囲の助けを受けながら自ら物事を決める「自立」を考えてきた。障害者運動の先進地米国のワシントンで当事者のリーダーが集う会議があり、日本から仲間が参加すると知り、渡米した。

 会議は23日に始まった。25日午前(日本時間25日夜から26日未明)に、日本の参加者約40人でワシントンをパレードする予定。「(被害者が)かわいそう、というだけで事件を終わらせてはいけない」と、事件の内容を米国に発信するつもりだ。

 一方の今村さんは、障害者の自立を支援する東京都江戸川区のNPO法人理事長。26日、障害者団体などが横浜市で開く「『ともに生きる社会』を考える」集会にスタッフとして参加する。

 事件後、被告の言動を肯定するかのような意見がインターネットに見られることが気になった。「事件を機に考えたい」と、集会の企画に加わった。主に考えたのは施設の在り方。集会で話題にする予定で、「当事者は入所を本当に望んでいるのか。地域から障害者を排除せず、家族も当事者も満足できる暮らし方を探りたい」と語る。

 29歳のころ、帰省中に天竜川の土手で首の骨を折る大けがを負った。リハビリ生活中、江戸川区でバリアフリーの賃貸マンションが建設されると知って入居。出会った人たちと障害者の自立支援を始めた。「誰だって障害の当事者になり得る。自分自身のことと想像して、一緒に考えてほしい」と呼び掛ける考えだ。

(7月25日)

長野県のニュース(7月25日)