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「人の幸せを奪い、不幸をばらまく存在」。植松聖被告(27)が最近時事通信に寄せた手紙にある。重度・重複障害者を指す。相模原市の津久井やまゆり園で19人を殺害した1年前と同じ考えだ。安楽死させるべきとの主張も変わらない

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事件後、識者がさまざまなコメントを発した。印象に残ったのが社会学者の立岩真也さん(立命館大教授)の意見だ。安楽死の主張や優生思想は、他人にとっての損得によって時に人を生まれないようにし、時に人に死んでもらおうという考えや行い―

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さらに続ける。他人、つまり私たちにはそれを支持してしまうところがある。楽で都合がよいからだ、と。「内なる優生思想」は誰の心にも潜んでいる。ならば被告を異常者として断罪して終わりにはならない。障害者や家族を不幸と決めつけていないか。自戒しなければと思う

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知的障害がある三宅浩子さんは横浜のグループホームで暮らす46歳。事件後に意見を発表するようになった。豆腐の製造や販売が仕事。目標は手話の資格を取ることだ。「Hey!Say!JUMP」のコンサートが楽しみという。夢も生きがいもある

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事件が問い掛けるものをテーマに編んだ大月書店刊「生きたかった」で読んだ。「内なる優生思想」をどう弱めるか。できる人が得をするのが当然という近代社会の正義をのさばらせない。支える人たちにかかる負担を減らす―。身の回りに当てはめて考えてみたい立岩さんの提言である。

(7月26日)

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