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日銀委員交代 政策決定が偏らないか

 日銀の審議委員が2人交代した。

 退任した木内登英氏と佐藤健裕氏はエコノミスト出身。現状の金融緩和策に異議を唱えて、政策決定会合でも一貫して反対票を投じてきた。

 これに対し、新任でシンクタンク出身の片岡剛士氏とメガバンク出身の鈴木人司氏は、現行政策におおむね賛成の立場とされる。

 今回の交代で、審議委員全員が2013年春に発足した黒田東彦総裁の下で就任したことになる。政府の意向が今回の人事に反映されたという指摘も根強い。

 日銀の金融政策は、正副総裁3人と審議委員6人の政策委員が多数決で決める。現行策に対する警鐘役がいなくなり、幅広い意見に基づく論議が失われないか。政策決定の方向性が偏る懸念がある。

 日銀の大規模金融緩和政策が限界を迎えていることは明らかだ。今後は政策の問題点に真摯(しんし)に向き合い、目標の見直しや金融緩和の出口に向けた政策も求められる。見解が近い委員による硬直した議論は避けなければならない。

 日銀の緩和策は、金融機関から国債を購入して市場に大量のお金を供給し、デフレから脱却する狙いだった。すでに日銀の総資産は500兆円を突破し、日本の国内総生産(GDP)にほぼ並んだ。それなのに物価は上昇せず、日銀は今月、物価上昇率2%の達成時期の目標を1年先送りしている。延期は6回目になる。

 退任した木内氏は、マイナス金利政策の導入に反対するなど、黒田路線とは一定の距離を置いてきた。佐藤氏も大規模金融緩和を実施してもデフレ脱却は難しいと主張し、物価上昇率の目標も「再考する時期に来ている」との認識を示していた。2人が果たしてきた役割は大きかったはずだ。

 米国の中央銀行に当たる米連邦準備制度理事会(FRB)は、金融引き締めに積極的な「タカ派」と消極的な「ハト派」に分かれ、政策決定に向けて活発な議論を交わすことで知られる。

 日銀は健全な議論を続けられるのか。片岡氏は積極的な金融緩和で物価上昇を目指す主張で知られ、現体制に近い。ただし、25日の会見では「現実の状況を無視するのは間違いだ」と述べ、審議委員としての判断は従来の発言に縛られない見解も示している。

 今回の人事で日銀の「安倍色」が強まりかねない。日銀は日銀法で独立性を担保された存在であることを忘れず、日本経済の現状を注視し、必要な政策を決めていく姿勢を欠かしてはならない。

(7月27日)

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