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憲法の岐路 欧州の教訓 国民の分離を避けねば

 国論が二分された状態や与野党が鋭く対立する状況の下では、国民投票は社会を不安定にする―。

 衆院憲法審査会の欧州3カ国視察から浮かび上がる教訓だ。

 安倍晋三首相は2020年の改正憲法施行に向け国民投票を行う考えを示している。強引に進めるようでは禍根を残す。欧州の例に学び、立ち止まって、国民的合意の道を探るべきだ。

 視察には与野党から合わせて7人が参加した。英国、イタリア、スウェーデンを訪ね、議会関係者らと意見交換した。

 英国では昨年6月、欧州連合(EU)からの離脱を巡り国民投票が行われた。離脱賛成票が反対票をわずかに上回った結果を受け、EU残留を訴えていたキャメロン首相が辞任している。

 首相の辞任後も、残留支持派が多かったスコットランドで英国からの独立を求める署名運動が起きるなど混乱が続いた。投票やり直しを求める声も多かった。

 キャメロン氏は視察団との面会で、「大事なのは公平、公正なプロセスで賛否両派をサポートすること」と述べたという。国民が十分な情報を提供され冷静に議論できる環境を整えた上でないと、投票は社会の分断を深める、との警告と受け取れる。

 イタリアでは昨年12月の投票で上院の権限を縮小する改憲案が否決され、レンツィ首相が辞任に追い込まれた。現内閣の閣僚の一人は視察団に対し「投票は政治色を帯びた。賛否両派の政治的対立が顕著だった」と述べている。

 スウェーデンは安倍首相が改憲項目の一つに掲げる教育無償化を実施している。大学など高等教育機関は憲法ではなく、「政党間の共通認識」によって無償にしているとの説明だったという。

 英国、イタリアの例からくみ取るべきは何だろう。政府や与野党が協力して投票環境を整えることの大切さではないか。

 国民投票は国の針路を決定付ける。威力は絶大だ。結果が出たら簡単には軌道修正できない。

 そう考えてくると安倍首相の姿勢の危うさが見えてくる。安保法や共謀罪法と同様、無理押しする心配が否定しきれない。それでは分断はさらに深まる。

 最低投票率の規定がないなど、国民投票法そのものの欠陥も直っていない。現政権の下で実施することには賛成できない。

(7月27日)

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