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中国から日本に伝わったスモモ(李)は古くから夏の果実として貴ばれた。信州は今や有数の産地だ。出荷量が多い中野市では、中生種の収穫が最盛期を迎えている。そのスモモを題材に使ったことわざに〈李下(りか)に冠を正さず〉がある

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実が成熟している木の下で曲がった冠を手を上げて直そうとすると、遠くからは実を盗むように見える。少しでも疑いを持たれるような行動は慎め、との戒めである。安倍晋三首相が加計学園をめぐる閉会中審査でことわざを引いて反省の姿勢を見せた

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納得した人がいるだろうか。学園の獣医学部新設計画は今年1月20日、自ら議長を務める国家戦略特区諮問会議が正式に認める段階で初めて知った、との答弁だ。今治市は2015年6月に新設を提案した。それは承知していたが、加計の計画は知らなかったとは不自然に過ぎる

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日本料理店、焼き肉店、居酒屋、そしてゴルフ場。首相は昨年少なくとも7回、学園理事長と時間を共にし、おごったりおごられたりした。一方で理事長は地方創生担当相らに立て続けに面会している。「冠を正さず」と今更言って晴れる疑惑ではない

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ことわざに忠実ならば「腹心の友」が権益を得る特区認定は避けるべきだった。〈李下に蹊径(けいけい)無し〉は、スモモの下には隠れた小道はない、清廉潔白な政治家のもとでは不正が行われる余地はないことのたとえだ。首相もスモモの実を取っていないというなら白紙に戻し出直してはどうか。

(7月27日)

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