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「助けてくれという哀れな顔も、火だるまになって熱いと(顔を覆い)落ちていくのも全部見ちゃう」。長野市の元ゼロ戦パイロット原田要さんにとっての戦争だ。敵機にとどめを刺すため至近距離に接近することが多い小隊長だった

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「相手も死にたくなかったんだろう、家族もいたんだろう」。表情まで見えた敵機パイロットの心中を察するように言葉を絞り出した。2015年7月、自宅で須坂市のフリーディレクター宮尾哲雄さんがカメラを回しつつインタビューした時の映像だ

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原田さんは胸に「ひかり幼稚園」と入った白シャツを着ていた。この日は経営する幼稚園の園児が自宅の菜園で芋掘りを体験。それが終わり園バスを見送った後に収録した。インタビューは原田さんが99歳で亡くなる71日前の16年2月まで続く。言葉の力は最後まで衰えなかった

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証言と記録映像を織り合わせたドキュメンタリー映画「原田要 平和への祈り―元ゼロ戦パイロットの100年」が完成した。あすから長野市の長野相生座・ロキシーで上映される。監督を務めた宮尾さんは思う。原田さんに導かれてここまできた、と

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あやめた命の数以上に次世代の命を育てることが与えられた償い―。原田さんは50代で幼稚園を始めた動機を語っている。晩年の25年間は講演会で戦争の悲惨さと平和への願いを訴えた。経験を事実で裏付けて語る誠実さが誰しもの胸を打つ。上映を待つ若い世代がことのほか多いという。

(7月28日)

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