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稲田氏辞任 首相の責任は免れない

 南スーダン国連平和維持活動(PKO)部隊の日報隠蔽(いんぺい)問題を巡り、稲田朋美防衛相が辞任した。遅きに失した決断である。

 不安定な国会答弁や問題発言で再三、閣僚としての資質を問われてきた。かばい続けた安倍晋三首相の責任は重い。

 記者会見で稲田氏は「これほどまでに防衛省・自衛隊として世間をお騒がせし、管理監督者として責任は免れないと思っていた」とした。混乱を招いた責任を取るとは人ごとのような言い方だ。

 防衛省のトップとして組織を統率できていたのか、防衛政策の根幹に関わる問題である。「廃棄済み」とされていたデータの存在が統合幕僚監部で確認されてから稲田氏への報告までに1カ月もかかり、文民統制(シビリアンコントロール)が疑問視された。

 さらに陸上自衛隊にも保管されていたことが分かったものの、非公表とする方針を了承していた疑いが拭えない。本来は監察の対象外である稲田氏が聴取を受ける異例の展開にもなった。

 それだけではない。日報の「戦闘」の記述を巡り「法的な意味での戦闘行為はなかった」と強弁を繰り返した。「9条の問題になるので武力衝突という言葉を使っている」と、憲法上の疑義を言い換えでごまかすかの答弁もあった。

 自衛隊の政治利用と取れる都議選での演説、森友学園との関係についての事実と異なる説明、教育勅語を是認する発言など問題のある言動を何度も重ねている。

 任に堪えないのは明らかなのに首相は擁護してきた。東日本大震災を巡っての問題発言などで復興相らを事実上更迭したのとは対照的だ。結果として防衛省に対する信頼を大きく損なった。

 8月早々の内閣改造まで防衛相は岸田文雄外相が兼務する。安全保障環境の厳しさを強調しながら専任の大臣を欠く事態だ。

 首相は政治信条が近い稲田氏を「将来の首相候補」と期待し、重用してきた。行政改革担当相、自民党政調会長を経て、防衛相に起用した。安保分野の経験が足りないとの声が党内にある中での「目玉人事」だった。

 辞任を受け、首相は任命責任を認め「国民の閣僚に対する厳しい批判については真摯(しんし)に受け止めなければならない」と述べた。

 国会から要請があれば「政府として対応するのは当然のこと」と閉会中審査に応じる考えも示している。適材適所だったのか、どんな判断で続投させてきたのか。きちんと説明する必要がある。

(7月29日)

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