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エネルギー計画 国民の声に耳を傾けよ

 経済産業省がエネルギー基本計画の改定に向け、議論を始めると発表した。国の中長期的なエネルギー政策の指針で3年ごとに見直すことになっている。

 2014年策定の現計画は原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、再稼働方針を明記している。世耕弘成経産相は記者会見で骨格は変えないとし、審議会や有識者会議で議論するとした。

 経産相に問う。国民の声を聴く意向は今回もないのか、と。

 政府は現計画を民意を無視して策定した。

 12年夏、当時の民主党政権は計画策定に向け、全国11都市で原発について意見を聴く会を開き、討論型世論調査も実施した。その結果、再生可能エネルギーの普及を進め、30年代に原発稼働ゼロを目指す戦略を決めている。基本計画に反映させる前に政権交代した。

 安倍政権は12年12月の発足直後にゼロ目標を撤回。基本計画を審議する委員を経済界などから選び、現行計画をまとめた。市民の意見を生かした脱原発路線は顧みられなかった。

 政府の原発推進路線はその後も加速する。15年には30年度の電源構成比率を決め、原発は20〜22%程度にするのが望ましいとした。原則40年の運転期間を延長するか、建て替え、新設がなければ達成が難しい目標である。

 今回の見直しでは「目標をどう達成するのか議論する」(世耕経産相)という。民意無視の現計画が電源構成比率につながった。それが新基本計画に反映されることを認めるわけにはいかない。

 脱原発を求める民意は各種世論調査でも変化していない。基本計画の策定は、国民に向き合うことから始めるべきである。

 世界の潮流にも目を背けてはならない。台湾はアジアで初めて脱原発に踏み切り、韓国の文在寅大統領も原発の新設計画の白紙化を宣言した。米国では他の発電方法のコスト低下で、原発新設計画が中止に追い込まれている。

 原発の矛盾は覆い隠せない。事故経費や安全対策費などを含めれば安価とはいえない。原発から出る高レベル放射性廃棄物の処分方法も決まっていない。

 議論するべきことは幅広い。火力発電に頼れば温室効果ガスが増え、料金値上げも想定される。再生可能エネルギーで安定供給できるのかも検証する必要がある。

 必要なのは全ての課題を提示した上で、国民が議論し、進路を選ぶ過程である。旧態依然とした審議会だけで決める問題ではない。

(8月2日)

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