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揺れる米政権 日本は外交の間口を広く

 安手のドラマでも見ているようだ。

 トランプ米政権の足腰が定まらない。ホワイトハウスの内紛で、大統領の右腕である首席補佐官までが入れ替わっている。

 米国は内憂外患の状況にある。政権が指導力を発揮できないままでは信頼は失墜する。新たに首席補佐官に就いたケリー氏の手腕を注視したい。

 トランプ政権では、イエーツ司法長官代行、フリン大統領補佐官、コミー連邦捜査局(FBI)長官ら高官の失脚が続いた。最近も、広報部長に起用されたスカラムチ氏がホワイトハウス内の確執を深めた。対立していたスパイサー報道官が辞任し、プリーバス首席補佐官も更迭された。

 そのスカラムチ氏も、ケリー新首席補佐官の進言で解任。ティラーソン国務長官の辞任まで取り沙汰されている。

 大統領の公約の柱である医療保険制度改革(オバマケア)を廃止する法案は上院で否決された。廃止に伴って実現する計画だった、法人税や所得税の大幅減税は暗礁に乗り上げている。

 借金の残高は10月にも法定上限の20兆ドル(2200兆円)に達する見通しだ。上限引き上げの法律を作らなくては債務不履行に陥りかねない。2018会計年度の予算も9月末までに成立させないと政府機関の閉鎖を招く。

 政府高官ポストが埋まらない異例の事態が、重要案件が滞る要因に挙げられる。ごたごたを繰り返している場合ではない。

 対照的に、冷静な判断を続ける米議会の存在感が際立つ。

 上下院とも与党共和党が多数を占める。大統領寄りでも不思議ではない中、大統領選干渉疑惑「ロシアゲート」に絡み、コミー前FBI長官の公聴会証言を実現させた。ロシアへの制裁強化法案も可決し、疑惑の目が向けられる大統領の裁量を制限した。

 メキシコ国境に築く「壁」の予算も上院は否決する構えという。

 菅義偉官房長官は「安倍晋三首相とトランプ氏との強固な信頼関係に支えられ、日米関係はかつてないほど盤石」と述べる。米国の政治学者は、大統領の信頼を得ようとする日本政府の姿勢に「『アジアのイスラエル』と化して孤立する」と警鐘を鳴らす。

 対米関係も「大統領依存」では心もとない。米議会との意思疎通を深めるなど、外交の間口を広げるべきだ。揺らぐ米政権を尻目に、国際社会は新たな秩序形成を探り始めている。

(8月3日)

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