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宮崎勇著「軍縮の経済学」(岩波新書)が出たのはちょうど東京五輪のとき。戦後の高度成長は植民地経営と軍事の支出が無くなったからできた―。軍備放棄の恩恵を説く分析は新鮮で、堅い内容にもかかわらずベストセラーになった

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日本経済の経験は世界の軍縮機運を高めるのに貢献できるはず。幸いなことにモラルのよりどころとなる憲法を持っている―。そう提言した宮崎さんは当時、経済企画庁の職員だった。池田内閣の所得倍増計画作成で実務を仕切り、経済白書も担当した

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「強兵と富国は両立しない」との思いの原点には、学徒動員で予科練の教官となり、若者を特攻に送り出したつらい体験もあったという。60年代の所得倍増計画は目標を上回る成果を上げ、波及効果は農村の子どもにも感じられた。「豊かさ=軽武装」は共通認識になっていった

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さて出直しとなった内閣改造で、再び「経済最優先」を打ち出して見せた安倍晋三首相である。生活安定を望む国民の気持ちを手玉に取るように、選挙になると「経済優先」を掲げ、支持を得ると強気一点張りになる―。そんなことが繰り返されてきた

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祖父・岸信介元首相の悲願を受け継いだ憲法改正への執念。前段として安保法制や共謀罪を強行採決したものの支持率急落で本心を隠した―。そうみるのはうがちすぎか。新安保条約を強行し退陣した岸内閣の後、「経済の池田」を押し出した池田首相のような覚悟のほどはうかがえない。

(8月5日)

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