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里親制度 養育を支える施策こそ

 就学前の子どもを新たに乳児院や児童養護施設に入れるのを原則としてやめ、里親の元で暮らす割合を7年以内に75%にする。特別養子縁組を5年で倍増させ、年間千件以上にする―。

 厚生労働省が有識者会議の報告を踏まえて設ける数値目標だ。虐待などにより親元で暮らせない子どもの大半が施設に入っている現状を改める狙いがある。就学後の子どもについても、里親に託す割合を10年以内に50%にする。

 昨年改正された児童福祉法は、里親や養父母による家庭的な養育を基本とすることを明記した。実現に向け、思い切った数値目標を掲げるのは一つの方法だろう。

 里親への委託率を2029年度までに3割以上にするという従来の目標を大幅に引き上げ、達成時期も前倒しする。目指す方向そのものに異存はない。

 ただ、議論が足りず、具体的な施策の裏づけを欠いている。現場が無理を強いられ、子ども一人一人への対応がおろそかになりはしないか心配だ。

 また、養父母が戸籍上の実子として引き取る特別養子縁組は、子どもの一生に関わる。それだけに、双方の事情や意思を慎重に見極める必要がある。成立件数にばかりとらわれるべきではない。

 親元で暮らせず、社会的な養護を受けている子どもは全国におよそ4万5千人いる。里親への委託率は2割に満たない。7割を超す米国や英国をはじめ、欧米各国とは大きな開きがある。

 子どもを里親に託すには、丁寧な対応が必要になる。里親とうまく関係を築けなければ、子どもはかえってつらい思いをする。

 里親を支えることも大事だ。虐待を受けて心に傷を負った子や発達障害の子への対応に悩む里親は多い。周囲の理解を得られずに孤立してしまう場合もある。

 中核の役割を担う児童相談所は、増え続ける虐待への対応に追われている。今のまま委託率を大きく高めようとしても限界を超えるだろう。児相の人員態勢を拡充することが欠かせない。

 里親も足りていない。共稼ぎが増え、仕事との両立が難しいことがその背景にある。特別養子縁組の際に取れるようになった育児休業を、広く里親に認めれば、具体的な支援になる。

 何より肝心なのは自治体がどれだけ主体的に取り組むかだ。長野県は里親への委託率が全国を下回っている。NPOと協力して5割に近づけた静岡市の試みなども参考に、取り組みを強めたい。

(8月7日)

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