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経済の再生 看板はすでに色あせた

 もはや看板は色あせているのではないか。

 安倍晋三首相が改造内閣発足直後の記者会見で、「最優先は経済の再生」と語り、「経済の好循環をさらに加速し、デフレ脱却を成し遂げる」と改めて強調している。

 2012年の第2次安倍内閣の発足直後からの課題である。確かに「アベノミクス」は当初、一定の成果を挙げたといえるだろう。日銀の大規模金融緩和の効果で株価上昇や円安の傾向をつくり、企業業績は改善した。「安倍1強」をつくる源泉にもなった。

 加計学園問題などで内閣支持率が落ち込む中、国民の人気が高い原点を強調して、挽回したいという狙いが安倍首相にはあるのだろう。思惑通りに進むのか。アベノミクスの行き詰まりは明らかだ。異論を唱える新閣僚もいる。

 日銀が金融緩和を続けても物価上昇の勢いは鈍く、デフレ脱却は見通せない。日銀は2%の物価上昇目標の達成時期を1年先送りした。延期は6度目である。

 黒田東彦総裁はデフレ脱却が進まない理由を、家庭や企業のデフレ心理に求めている。家庭には賃金や物価が上がりにくいことを前提にした節約志向があり、企業もそれに対応して値上げに慎重という分析だ。

 背景には人口減や年金問題など将来への不安もある。企業には業績が伸びても人件費を抑えようとする傾向がなくならない。

 日銀が保有する国債は発行総額の6割を超えた。経済再生を支えた大規模緩和は限界が近い。財政再建や社会保障改革などの構造問題に政府が真正面から取り組むことが欠かせない。

 政府は根源的な問題に対応した政策を打ち出しているのか。

 改造内閣が目玉政策とするのは、教育無償化や社会人の学び直しなどの「人づくり革命」である。「1億総活躍」など以前から掲げる政策との重複感が否めない。兆円単位とされる財源の捻出方法も今後の検討課題だ。

 国の財政状況は悪化するばかりだ。企業収益の拡大とともに伸びてきた税収も16年度は減少に転じた。20年度に基礎的財政収支を黒字にする目標達成は厳しい。借金残高は1千兆円を超え先進国で最悪の水準だ。それなのに政府は財政健全化の新指標を導入し、実情を取り繕うことを画策している。景気浮揚のため、10兆円規模の補正予算を求める声も出始めた。

 場当たり的な経済政策を続けていては「経済の再生」は看板倒れに終わる。

(8月7日)

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