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ASEAN50年 存在感が薄れていく

 東南アジア諸国連合(ASEAN)が創設50周年を迎えた。

 10カ国が加盟し、総人口は6億4千万人を数える。単一市場や共生社会の実現を掲げ、2015年12月にはASEAN共同体も発足させた。

 きのうマニラで開かれた式典では、共同体の未来のために努力を重ねることを宣言した。

 その思いと裏腹に、一枚岩になれない。中国が経済支援などで影響力を強め、分断が進む。ASEANはどこへ向かうのか、重大な岐路に立たされている。

 結束が乱れてきた要因は、南シナ海問題だ。中国が実効支配を固めるため、人工島造成などで軍事拠点化を進めている。

 ASEANと中国は02年、紛争を回避し、問題を解決するために「行動宣言」に署名。法的拘束力のある「行動規範」の策定を目指し、交渉してきた。

 先日、双方による外相会議で承認された行動規範の枠組みは肝心の法的拘束力に関する言及はなく、乏しい中身となったようだ。詳細は公表されていないものの、国連海洋法条約の順守を盛り込む一方、行動規範は解決の手段ではないと明示したとされる。

 昨年7月、海洋法条約に基づく仲裁裁判所は「歴史的に、この海域や資源を排他的に支配していたとの証拠はない」と、中国による主権主張を否定した。

 中国はこの判断を「紙くず」と言い放ち、受け入れを拒否し続けている。仲裁手続きを申し立てたフィリピンは融和姿勢に転換している。今回の枠組みづくりにも中国や親中派加盟国の意向が働いたとの見方は強い。

 来年11月までに規範の条文をまとめたいとの声がある。ベトナムは法的拘束力のある内容にするよう強く求めており、いつ完成するか、はっきりしない。

 問題なのは、中国が実効支配を進めるための時間稼ぎに利用することだ。ASEAN内の足並みがより乱れる恐れがある。

 中国を強気にさせているのは、トランプ米政権のアジア外交の方針が定まっていないことも影響しているとみていい。

 経済面で「世界の成長センター」として熱い視線を集める地域だが、政治や安全保障面では懸念材料が多い。ASEANはそもそも冷戦下の1967年、地域の発展と安定を目指して発足した。原点を忘れてはならない。

 大国に翻弄(ほんろう)されることなく、存在感を発揮できるか。ASEAN加盟国は問い直してほしい。

(8月9日)

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