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中野地盤沈下 県と市が主導し検証を

 第三者による検証がなければ、住民の不安は解消しないだろう。

 北陸新幹線(長野経由)長野―飯山間にある高丘トンネル(延長6・9キロ)の建設に伴う地盤沈下問題である。

 建設主体の独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が補償交渉を終えた後も、新たな被害の訴えが相次いでいる。家屋補償を受けた後に被害が大きくなっていると訴える住民もいる。

 機構は、地元の中野市に補償件数を95戸189棟と明らかにしただけで、被害実態や全容は「個人情報」を理由に公表していない。

 地表面が最大で14センチ沈んだことを示す文書の存在も判明している。機構の職員がまとめた論文なのに、機構は公表もせず、中野市や住民に報告もしていない。文書の通りなら、被害は深刻と考えなければならない。

 北陸新幹線は全国新幹線鉄道整備法に基づいて国が計画を決めた整備新幹線である。主に国と沿線自治体が財政負担をしている。工事で被害が出たのなら、積極的に情報を公開し、住民を救済するのが当然である。

 機構は新たに寄せられた被害の訴えは、トンネルとの距離を踏まえて「工事との因果関係はない」と結論付けた。すでに補償交渉を終えた住民とは、それ以降の交渉を住民側が放棄する旨を盛り込んだ「承諾書」も交わしている。

 機構が自らの責任を自ら判断することに限界もある。第三者による調査が必要だ。

 補償交渉が機構と住民の直接交渉だったことにも疑問がある。専門性の高い内容である。機構の主張に対し、住民が十分な要求をできたのかも検証するべきだ。

 機構の補償は十分だったのか、被害はどこまで広がっているのか、新たに被害が発生する懸念はないのか―。原因も明白にして、同様の工事で被害が出ないような対策も進めなければならない。

 第三者による調査を主導できるのは、地元の自治体しかないだろう。住民の不安は日々高まっている。県と中野市が、迅速に対応を進めるよう求めたい。

 県内ではJR東海がリニア中央新幹線の工事を進めている。民間工事ではあるものの、県内区間が含まれる中央アルプストンネルや風越山トンネルなど、計60キロ近くの建設を機構に委託している。

 今回の地盤沈下問題をこのまま放置すれば、リニア工事に対する地元住民の不信を招くことにつながる。機構は誠意を持って解決に当たらなければならない。

(8月9日)

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