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松代大本営など戦争遺跡調査 たなざらし状態に

 松代大本営地下壕(長野市)を含む全国51カ所の「戦争遺跡」を対象に文化庁が実施した詳細調査が、2005年度の実質終了から12年たった今も、取りまとめや公表の見通しが立たず「たなざらし」の状態となっていることが11日、分かった。信濃毎日新聞の取材によると、51カ所のうち大本営地下壕を含む34カ所は文化財指定を受けていない。戦争の記憶継承の重要性が増す中で、国の姿勢が戦争遺跡の保存や活用を停滞させている。

 同庁は、10年以上も報告書をまとめない理由について、「文言を調整中で、慎重に検討しているため」(記念物課)と説明する。ただ、戦争遺跡の保存に関わる関係者からは「沖縄など一部の遺跡の記述を巡り、政府内で慎重論が出て、公表できなくなった」との指摘が出ている。

 文化庁は、1995年の文化財保護法改正で、明治期から第2次世界大戦終結ごろまでの比較的新しい遺跡が文化財指定対象に加わったことを受け、保存・公開を後押しし始めた。有識者でつくる同庁の検討会は02年、地元自治体の意見などを基に詳細調査する遺跡を選定。03〜05年度にかけ順次、調査を進め、03年には松代も調査した。

 長野県教委への情報公開請求や文化庁への取材、戦争遺跡の保存・活用に取り組む「戦争遺跡保存全国ネットワーク」(事務局・長野市)が昨年まとめた資料などに基づくと、51カ所は松代大本営地下壕のほか、「陸軍第九技術研究所」(登戸研究所・川崎市)、「大津島回天特別攻撃基地」(山口県周南市)など。このうち、これまでに一部か全部が国指定文化財になっているのは幕末〜明治期の3カ所。市町村指定などの文化財が含まれる例は14カ所とみられ、松代大本営地下壕を含む34カ所は文化財になっていない。

 同庁は13年、全国の自治体に対し、国の調査報告の公表を待たず、自治体が主体的に戦争遺跡の史跡指定や保全を検討するよう通知。ただ、自治体側は、方針転換とも映る国の姿勢を疑問視し、「責任を持って歴史的な評価を示すべきだ」(長野市の樋口博副市長)との受け止めが強い。

 戦争遺跡保存全国ネットワークは早期公表を求めている。共同代表の十菱駿武(じゅうびししゅんぶ)・山梨学院大客員教授(72)=東京=は「戦争遺跡は国民の共有財産。戦争の記憶を伝える人が少なくなっていく中、保全などの取り組みが急務だ」と指摘している。

(8月12日)

長野県のニュース(8月12日)