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ふるさと納税 もうかったと喜べるか

 地方への寄付が集まれば、都市部の税収が減ってもいいのか。疑問を映す調査結果だ。

 個人が選んだ自治体に寄付すると、2千円の自己負担を除いた金額が住民税などから控除(軽減)される「ふるさと納税」。自治体の個人住民税控除の実態を総務省が公表した。

 個人住民税の控除額は前年の住民の寄付額によって決まる。昨年度の寄付受け入れ額から、本年度の住民税控除額を引いた額を都道府県ごとに見ると、マイナスは東京の458億円を最高に、神奈川、愛知など11都府県に上った。残りの道県はプラスかゼロ。長野は176億円のプラスだった。

 この計算には寄付への返礼品の経費が含まれない。実質的に赤字の県や額はさらに増える。

 寄付は豪華な返礼品を贈っている地方の自治体に集中する傾向がある。それに伴い都市部から地方へ税収が流れている格好だ。

 税収が比較的少ない地方にとってはありがたい話だ。だが、都市部には保育園の待機児童問題など人口が多いゆえの課題がある。税収の大幅減によって、そうした課題の解決が遠のきかねない。

 減収額の75%は地方交付税で穴埋めされる特例があるが、不交付の東京23区は特に影響が大きい。

 長野県は全体とすれば黒字だが、市町村によって状況は異なる。本紙が返礼品経費を加味して集計した結果、2015年度、11市町村が赤字だった。

 高価な返礼品を用意した自治体が黒字になり、そうでない自治体が赤字になる傾向が表れた。黒字と赤字の最大差は14億円に上り、地方の中でも格差がある。

 赤字になれば、寄付して返礼品の見返りを受けた住民だけが税負担減の恩恵を受け、その他の住民は行政サービスの低下を甘受しなければならない。同じ自治体に暮らしながら不公平だ。

 ふるさと納税制度は都市部に偏る税収の格差を是正する名目で始まった。だが、税収格差を是正するのは本来、国税を一定割合で自治体に配分する地方交付税の役割だ。格差が大きいのなら交付税の法定率をもっと上げ、財源を大幅に地方に移すべきだ。

 それをしないで、限られたパイを自治体同士で争奪させている。もうかったと喜んでいる自治体も、よその自治体に入るはずの住民税を奪った結果だ。

 いつまでも国に乗せられていてはいけない。むしろ地方から制度廃止の声を上げ、財源移譲を求めるべきだ。

(8月12日)

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