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曽祖父が被爆した広島市の井上つぐみさんは高1だった2015年8月、ジュネーブ軍縮会議でスピーチに立った。原爆投下から70年の夏。「核兵器全廃に向けて大きな一歩を踏み出さなければ」と英語で訴え、清新な風を吹き込んだ

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長崎、広島の市民団体が派遣した「高校生平和大使」21人を代表しての演説だった。外務省がこの時の写真をホームページ(HP)に載せている。核廃絶を目指し活躍する日本の若者を「ユース非核特使」に委嘱、その活動例を紹介するコーナーである

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後押ししているはずの外務省の手のひらを返すような対応だ。14年から3年連続、会議で披露された平和大使のスピーチが取りやめになった。「今年は軍縮会議の議事上、適当でないと判断した」とは現地のジュネーブ軍縮会議日本政府代表部の説明だ。納得した高校生はいまい

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安倍晋三政権は国連が採択した核兵器禁止条約に署名しない。スピーチで参加を主張されれば厄介になると外務省側は考えたのか。一部の国から強い懸念が示されたという。さしずめ米国あたりか。核の傘の下では異なる意見は全て受け付けないらしい

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高見沢将林(のぶしげ)軍縮大使が高校生に「14〜16年は例外的な措置だった」と説明したのにはあ然とした。「微力だけど無力じゃない」を合言葉にした平和大使の活動は20周年。全国の高校生が協力する核廃絶署名は今年、過去最高の21万件を集めた。門を閉ざす政府は市民との溝をさらに深める。

(8月23日)

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