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医療的ケア児 成長の場を奪わぬよう

 たんの吸引など、日常生活を送るのに医療的な介助を必要とする子ども(医療的ケア児)の大部分が保育所に通えずにいる。その実態がくっきりと浮かび上がる調査結果だ。

 昨年度の受け入れは、長野県の8人を含め全国で337人にとどまったことが共同通信の調査で分かった。7県ではゼロだった。積極的な自治体はあるものの、地域差が大きく、全体として受け入れは進んでいない。

 新生児医療が発達して子どもの命を救えるようになった半面、障害が残る子が増え、医療的ケア児は急増している。2015年度時点で、4歳以下だけで6千人余と推計されている。

 同年代の子どもたちと接しながら育つことは、子どもの成長に大きな意味を持つ。その機会はどの子にも保障されなくてはならない。当たり前の権利を実現できるよう、国と自治体は本腰を入れて取り組む必要がある。

 医療的ケアは、たんの吸引のほか、鼻から栄養を送り込む「経管栄養」などがある。保育士も研修を受けて認定されれば行えるが、人手不足を背景に、ほとんどの保育所が対応できていない。

 預ける先がなければ、家族が自宅で介助するほかなくなる。実際に担うのは大抵の場合、母親だ。仕事をやめざるを得ず、ケアに追われて疲弊し、孤立してしまうことも多い。

 昨年改正された児童福祉法は医療的ケア児を支援する努力義務を自治体に課した。けれども、相談しても受け入れを検討すらしない自治体がいまだにある。子どもを育てるのは母親の責任という風潮も依然強く、自治体と交渉する気力もなくす人が少なくない。

 負担を親に押しつけ、追いつめている現状は改めなくてはならない。保育所への受け入れに積極的な自治体の試みに目を向け、各地域が主体的に取り組みたい。

 1970年代から独自の障害児保育制度を進めてきた大津市は、全ての市立保育所に看護師が常駐し、医療的ケア児が入ればさらに看護師を追加配置するという。一気にそこまでは難しいとしても、対応できる保育所を市町村が1カ所は設け、看護師や研修を受けた保育士を置けないか。

 NPOや母親らが自ら、通所施設を開設する動きも出てきた。やむにやまれぬ思いからの行動を傍観すべきでない。子どもの療育を社会が担い、親を支える仕組みをどうつくっていくか。地域や社会全体で考える必要がある。

(8月23日)

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