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大北事件賠償 真相の解明が先決だ

 釈然としない報告だ。 大北森林組合の補助金不正受給事件で、県側の不正による損害について誰がどの程度の賠償をすべきか。専門家3人の法的課題検討委員会は県職員11人に計1億5千万円余の賠償請求ができると結論付けた。

 11人はいずれも補助金交付を担った現地機関、北安曇地方事務所(当時)に在籍した課長以下の担当職員だ。指揮・監督する立場にある所長、副所長や本庁林務部職員は含まれない。

 不正の全容が明確でないのに現地職員だけに責任を負わせる。これでは県民の理解は得られまい。

 組合に不正受給された森林整備関連の補助金は7年間で14億5千万円。県は時効分などを除く9億円余の返還を求め、組合は33年間で返す計画を示している。

 誰が賠償するかが問題になるのは、県の不正な事務処理に対し国が科した制裁(加算金)の3億5千万円余だ。既に県が税金から支払っている。

 11人について検討委は、未施工の事業に対して現地調査をせずに補助金交付手続きをしたり、その書類のチェックを怠ったりしたことが民法上の過失か地方自治法上の重大な過失に当たるとした。

 一方で所長、副所長は「膨大な決裁書類の全てを確認することは困難。不正を見抜けなくても重大な過失があったとはいえない」と免責した。

 幹部の責任追及はこれでいいのか。同様に加算金を課された岡山市のケースで不正を看過したとして当時の市長ら幹部に賠償を命じた判例に照らしても疑問が残る。

 林務部の職員についても検討委は「予算消化を目的に不適正な事務処理を迫っていた事実までは確認できなかった」と賠償責任を問わなかった。

 だが、詐欺などの罪に問われた組合前専務理事に対する3月の長野地裁判決は「(地事所は林務部から)違法な手段を使っても予算を消化するよう迫られていた」と指摘し、確定している。

 こうした判断の違いの背景には、不正の始まり方や県の加担ぶりなど事件の全体像がいまだ十分解明されていない問題がある。

 地裁判決後の県民世論調査では、7割が県職員の再調査が必要と答えたが、県はこれに応えていない。調査に強制力を持つ百条委員会の設置を求める陳情を県議会はたなざらしにしている。

 真相を解明した上で責任のあり方を考える。その順番が逆立ちしていてはいつまでも解決しない。

(8月25日)

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