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顔写真はその人の大本(おおもと)が写る―とは写真家荒木経惟(のぶよし)さんの言葉だ。写真集「男」は素顔を世間にさらし続け活躍する200人を撮影した。その一人、落語家の桂歌丸さん。穏やかにして一徹、この先を見つめているような目が印象的だ

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先日、国立演芸場の高座に上がった。「鼻の周りがキラキラ光ってるんで水っぱな垂らしているんじゃないかとお思いか分かりませんが」。鼻から延びるチューブをこう表現。「見苦しい姿」をわび「世間には内緒にしてほしい」と続けて笑いを取った

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チューブの先は舞台裏に置いた酸素吸入器につながっている。肺炎などで入退院を繰り返し6月に復帰した。体重は37キロ。呼吸が苦しく、移動は車いす。それでも高座では背筋を伸ばし、ライフワークにする三遊亭円朝の作品「牡丹灯籠(ぼたんどうろう)」を切れのいい語り口で約45分間熱演した

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「笑点」の大喜利の司会を先代の故三遊亭円楽さんから引き継いだ。昨年、勇退し、落語一筋に生きる81歳である。近年の「笑い文化」に危機感は強い。「笑わせているんじゃなくて笑われていることに気付かない芸人がいる」。テレビの取材に答えた

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噺家(はなしか)の本分は噺を自分のものにし磨きをかけること。ひと息つくのは最期、目ェつむった時。あちらの世界で円楽さんからねぎらいの言葉と座布団の一枚ももらえたら―。著書「座布団一枚!」に書いている。でも円楽さん迎えに来るのは、ずっと先にしてください―。切なる願いである。

(8月25日)

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