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介護報酬 改定方針に透ける限界

 介護が必要な高齢者の自立支援で、成果を上げた介護サービス事業所への報酬を引き上げる―。

 2018年4月の介護報酬改定に向けた議論が続くなか、厚生労働省がこんな方針を打ち出した。

 逆に、自立支援に消極的な通所介護(デイサービス)への報酬は引き下げる。要介護度の重い人を減らし、介護費用を抑制したい考えのようだ。

 体操や手仕事による身体機能の訓練で日常生活の動作を取り戻せれば、高齢者の自信回復につながる。認知症の進行を遅らせる効果もあるだろう。

 ただ、何が望ましいサービスかを国が押し付けることには違和感がある。自立支援に当たる作業療法士ら専門職がいない事業所も、家族の負担を軽減する大切な役割を担っている。現場は「改善が見込めない高齢者が排除されかねない」と懸念している。

 高齢者と家族が利用するサービスを「自己選択」するのが、介護保険制度の原点だ。報酬の増減による誘導のしわ寄せが、当の利用者に及ぶのでは本末転倒になる。報酬の改定論議で見失ってはならない観点である。

 介護サービスを提供した事業所に支払う報酬の金額は国が定め、原則3年に1度改定している。利用者の自己負担(1〜2割)と税金、40歳以上の保険料を財源とする。要介護度が軽くなるほど報酬は低くなるため、事業所が自立支援に後ろ向きになっている、と指摘されていた。

 15年の改定で報酬は2・27%減額された。影響は大きく、事業所の倒産が相次いだ。介護職員の平均給与は全産業の平均に比べ月10万円も低い。政府は4月に介護報酬を臨時改定して給与増額を促したものの、事業所自体が経営難にあり待遇改善は進んでいない。離職率も高止まりしている。

 政府は今回、年末までに報酬の改定率を決める。介護の総費用は年10兆円に上る。25年には全人口に占める高齢者の割合は30%となる見通しで、総費用はさらに膨らむことになる。

 介護報酬の調整や、給付サービスの縮小、高齢者の負担増だけで介護保険財政の帳尻を合わせることには限界があろう。40〜64歳の介護保険料を収入に応じた「総報酬割」に切り替えたように、幅広く財源を求めていく方策を検討すべき時期にきている。

 持続性のある介護の仕組みを整えてこそ、利用者本位の質の高いサービスも期待できる。

(8月25日)

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