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福島の汚染水 課題先送りの無責任

 遠くない将来に訪れる限界にどう対応するのか。課題を先送りしていては不信感が増すだけである。

 東京電力福島第1原発の汚染水の問題だ。事故で溶け落ちた核燃料の冷却に使った水が高濃度汚染水となって、原子炉建屋の地下にたまっている。さらに建屋に流れ込む地下水が汚染水を増やしている。

 汚染水対策の「切り札」として国費約350億円が投じられたのが凍土遮水壁である。原発の周囲の地盤を凍らせ、全長約1・5キロ、深さ約30メートルの壁を築く。地下水流入を防ぎ、新たな汚染水の発生を抑える狙いである。残された区間の凍結が始まり、今秋にも全面運用に入る。

 期待通りの効果を発揮しても問題解決には程遠い。流入を完全に遮るのは難しく、毎日100トン程度の汚染水が新たに発生し続けるとみられるからだ。

 さらに大きな問題も残る。汚染水は多核種除去装置(ALPS)で浄化しても、放射性物質の一つ、トリチウムを除去できない。人体への影響は小さいとされ、通常の原発では希釈した上で海に放出している。ところが、福島原発では放出していない。放出量が膨大になる上、地元漁業者らに風評被害の懸念が出ているためだ。

 漁業者の不安も当然だ。その理由は東電の姿勢や体質にある。

 これまでも汚染水漏れなどトラブルが続出。今月上旬には、建屋地下の汚染水の水位が下がって漏えいする恐れがあったのに、公表が遅れている。

 柏崎刈羽原発の再稼働審査では、事故時の拠点となる免震重要棟が、想定される地震に耐えられないことを隠していたことも判明した。東電の体質が変わらない限り、理解を得られまい。

 トリチウムを含む処理水は原発敷地内に設けたタンクにため続けている。保管量は増え続け、7月現在で約77万7千トン、タンク数は約580基に上っている。設置スペースには限りがあり、いずれ行き詰まる。

 東電はこれまで、地元の反発を恐れ、処理水の処分方法を曖昧にしてきた。規制委が東電の姿勢を明確にするように要請していたものの、きのう提出した回答書でも具体的な方針を示さなかった。

 処分方法は有識者による政府の小委員会で検討中だ。国に一任するだけでは無責任だ。東電として考えられる対応策を示し、関係する地域に明確に説明していく姿勢が欠かせない。残された時間は多くない。

(8月26日)

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