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巨大地震対策 「予知は困難」を前提に

 大地震を予知し、厳戒態勢を敷いて被害を減らす―。大規模地震対策特別措置法(大震法)が想定した防災対策は、法制定から40年近くを経て大きく転換することになった。

 南海トラフ巨大地震の対策を検討してきた中央防災会議の有識者会議が報告書案をまとめた。地震が起きる場所や時期、規模について確度の高い予測はできないと指摘。大震法に基づく対応は「改める必要がある」と明記した。

 大震法は、東海地震に備えるため1978年に制定された。観測網で検知した異常を予兆と判断すると、首相が警戒宣言を出す。鉄道は運行を休止し、学校は休校に。病院の外来診療や銀行の営業も停止する。経済活動や住民の生活に強い規制が及ぶ。

 ところが、その前提が崩れている。予知の難しさがはっきりしてきたからだ。地震が起きる仕組みは複雑で、いまだ解明されていないことは多い。95年の阪神大震災も、2011年の東日本大震災も予見できなかった。

 また、東海地震が単独で起きるのではなく、九州沖にかけての南海トラフの震源域が連動する可能性がある。複数の震源域が一気に動いた東日本大震災を経験して、懸念はより強まった。

 南海トラフでマグニチュード(M)8〜9級の地震が30年以内に起きる確率は70%程度とされる。激しい揺れと津波により、死者は最大32万人余、経済損失は220兆円に上る―。政府の被害想定は想像を絶する規模だ。

 大震法とは別に、13年に特別措置法が施行され、長野県を含む29都府県707市町村を対象地域として防災施設や避難路の整備が進んでいる。この特措法は予知を前提としていない。東海地震だけを想定した大震法は整合性を欠く。報告書案は廃止や改正に踏み込んでいないが、大震法をこのまま残す理由は見いだせない。

 予知への過大な期待は、地震研究や対策のあり方をゆがめてもきた。政府は大震法を廃止し、予知に頼らない防災、減災対策に本腰を入れなくてはならない。観測体制を生かすにしても、新たな立法によるべきだ。

 有識者会議は、地殻変動などの異常を観測した場合に、住民に避難を促す仕組みの検討を国に求めた。地震研究の現状と限界を明確にして、自治体や住民の合意を得て進めることが欠かせない。自治体、住民も、予知は困難であることを前提に、地域での取り組みを練り直したい。

(8月26日)

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