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過疎地のスタンド 守る知恵を地域ぐるみで

 ガソリンスタンド(給油所)の減少が止まらない。

 今年3月末時点で全国のスタンド数は3万1467。ピーク時に比べ半減した。県内でもこの20年間で4割減った。燃料を買うために遠くまで出掛けなければならない「給油所過疎地」が全国的に増えている。

 ガソリン、軽油、灯油は暮らしの必需品だ。スタンドがこのまま減り続けるようだと過疎地はますます暮らしにくくなる。

 過疎地のスタンド対象のアンケートでは、今後の事業継続について「未定」ないし「廃業」との答えは合わせて3割近くにのぼる。住民、自治体、業界、政府が知恵と力を出し合って、守る手立てを編み出さなければならない。

 下伊那郡泰阜村では住民有志でつくる社団法人「振興センターやすおか」が村内唯一のスタンドを運営している。8年前、農協が経営から撤退したのを受けて法人を立ち上げた。



   <有志が出資して>

 約700世帯の村で198人が法人に資金を出し合った。出資した人はガソリンを1リットル当たり3円安く買うことができる。中沢雄策さん(44)が妻と父親の助けを得ながら、隣接する食料雑貨店と一緒に切り盛りしている。

 飯田市までは車で40分ほど。価格競争で経営は厳しい。

 「ぎりぎりですよ。スタンドだけではやっていけない」。村のバスの運転手も務めて暮らしを立てているという。

 近くに住む女性が車の給油にやってきた。村独自の地域振興券「とくとく20」を使うと実質2割引きになるので、いつもこの店で入れていると話していた。

 月間販売量は農協時代に比べ2〜3割増えた。振興券の効果が大きい。地域ぐるみの努力で維持されている店である。

 同じ下伊那の阿智村では、農協の撤退を受けて住民らが株式会社「そのはらエスエス」を設立、店を引き継いだ。7年前のことだ。タンク更新などの費用1540万円は農協と村が負担した。

 スタンドが減っている理由の一つは、エコカーの普及や少子化により燃料需要が減っていることである。統計では過去5年間に9%減った。今後増加に転じることは考えにくい。

 加えて、都市部や幹線道路沿いではセルフ化、大型化が進み価格競争が激しくなっている。スタンドがコンビニなどに変わっている光景を最近はよく見かける。

 経済産業省によるとスタンドが3カ所以下の「給油所過疎」の市町村は全国に302ある。長野県内では32、全体の4割が過疎とされる。泰阜村はその一つだ。

 どうすれば維持できるのか。同省が「ハンドブック」で紹介している例が参考になる。

 大分県杵築市では灯油配達の希望者宅に県と市、スタンド事業者の負担でタンクを設置、定期的に給油車が回って補給している。使った分だけ代金を請求する“置き薬”方式だ。

 尾瀬の入り口、福島県檜枝岐村は村内1カ所だけのスタンドを維持するために、ガソリン1リットル当たり10円を村が負担して価格を下げている。福井県大野市では地域の2社が合併し店を再編してコスト削減に結び付けた。

 置かれた状況はさまざまだ。万能の処方箋はない。それぞれ工夫するほかない。

 危険物を扱うスタンドには厳しい規制がかかっている。経営は規制の在り方にも左右される。

 最近では、2011年の改正消防法施行で古いタンクの改修、交換が義務付けられたために、費用を捻出、回収する見通しが立たず廃業する動きが加速した。



   <規制運用の工夫も>

 経産省は専属の担当者を置く余裕がないスタンドのために、客の呼び出しで離れた場所から駆けつけて接客する営業形態を昨年から解禁した。センサーやインターホンを設置するのが条件だ。

 安全確保は大前提としても、規制を見直す余地はほかにもないかさらに検討してほしい。

 車メーカーはいま電気自動車の実用化にしのぎを削っている。普及すればスタンドは根本的な変容を迫られる。

 地域の生活インフラを将来にわたりどう構築し、守っていくか。柔軟な発想と機敏な対応が今後ますます求められる。

(8月27日)

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