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夏季大学は信州の夏の風物詩だ。ある実行委員にうかがうと、準備で重要なのは講師の人選という。時宜を得たテーマを考え、適任者を探す。今夏、101回を迎えた「信濃木崎夏期大学」はノーベル賞の梶田隆章さんらを招いている

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第1回の1917年も「最初が肝心」と練りに練った。大正デモクラシー運動の中心となった政治学者の吉野作造、地方への学術普及を唱え開設にも協力した内務大臣の後藤新平らが講義。地の利を生かして白馬登山講習や木崎湖での水泳実習もあった

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開設準備に奔走したのは当時20代で校長になった平林広人である。北安曇郡校長会で「子どもの教育は、大人から教育しなければ効果は上がらない」と訴えたのがきっかけだった。著名な講師を招く力になったのは沢柳政太郎、伊藤長七ら東京で活躍する信州出身の教育者だった

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各国の中央銀行トップや学者が参加し、きのうまで米西部ジャクソンホールで開いた夏恒例のシンポジウムも講師が隆盛の鍵だ。当初は地味だったが、お目当ての有力者に出てもらうため趣味のフライフィッシングができるリゾートを会場にしたという

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日常を離れると口が滑らかになるのか、これまでも政策変更を示唆する講演が何度か市場を揺さぶっている。今夏の米欧トップ2人の話は肩透かしに終わったようだが、世界のお金の流れに直結するだけに注目度は抜群だった。さわやかな山岳リゾートにしては生臭い“学術の場”である。

(8月27日)

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