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臍帯血摘発 野放しの実態、解明を

 医学的な安全性、有効性が確かでない医療が法の網をかいくぐるようにして横行するのを止めなくてはならない。実態を徹底して解明したい。

 臍帯血(さいたいけつ)による再生医療を無届けで行ったとして、愛媛など4府県警の合同捜査本部が販売業者や医師ら6人を再生医療安全性確保法違反の疑いで逮捕した。購入した医療施設は他にもあり、立件の対象は広がる可能性がある。

 へその緒や胎盤にある臍帯血は血液細胞のもとになる幹細胞を多く含み、白血病などの治療に使われてきた。公的臍帯血バンクを通じた移植は1万例を超す。

 一方で、老化防止や美容効果をうたい、高額な自由診療を無届けで行う医療施設がある。治療の手だてがなくなった末期がん患者らが、わらにもすがる思いで、高い費用を払って臍帯血の移植を受けることも少なくない。

 他人の臍帯血を体内に入れることは、免疫拒絶反応や感染症の危険を伴い、命にも関わる。美容や老化防止の効果に根拠はなく、がん治療についても有効性はまだ検証されていない。

 にもかかわらず、長く野放しになっていたのが実態だ。2014年施行の安全性確保法は、事前審査や治療計画の提出を義務づけたが、無届けで行う医療施設は後を絶たず、今回明るみに出たのも氷山の一角と指摘されている。

 今回の臍帯血は、09年に経営破綻した民間バンクから流出した。逮捕された販売業者が大量に入手し、中間業者らを介して各地の医療施設に渡ったとみられる。販売した臍帯血は300人分を超え、移植を受けた患者はおよそ30都道府県に及ぶという。

 民間バンクは、子どもや家族が将来、病気になったときに使うことを前提に、有料で臍帯血を保管する事業だ。白血病患者らに臍帯血を提供する公的バンクは法律で許可制とされているが、民間バンクは対象になっていない。

 厳重に保管されているか。今回のように破綻した場合、預かった臍帯血をどうするのか。法的に定められていないことが、かねて問題視されていた。

 民間バンクが現時点でいくつあるのかも厚生労働省はつかんでいない。ここへきて実態調査に乗り出したものの、対応が遅すぎるとのそしりは免れない。

 再生医療への信頼にも関わる問題だ。臍帯血を預ける人の権利と患者の安全を守るために必要な規制や、監督する仕組みを政府は検討する必要がある。

(8月29日)

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