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警視庁の史料「大正大震火災誌」は1923年の関東大震災で拡散した流言飛語を警察署が知った時系列で記している。発生から1時間後の9月1日午後1時ごろ〈富士山が大爆発〉、午後3時ごろ〈社会主義者や朝鮮人の放火多し〉

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翌日午前10時ごろ〈火災の多くが不逞(ふてい)鮮人の放火、爆弾による〉、午後5時30分〈井水に毒薬投入〉。不安と恐怖をあおられた住民は自警団を組織。検問所を設け朝鮮人を見つけては日本刀や竹やりで襲った。〈猛烈なる迫害を加えた〉と史料にはある

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爆弾と毒薬を持っていると警察に突き出された朝鮮人の所持品は缶詰と砂糖だった―との記載もある。だが内務省はデマを沈静化させるどころか3日朝、地方長官に放火や爆破を事実として伝え、朝鮮人の取り締まり強化を指示した。これが虐殺をさらに拡散させることになった

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日本弁護士連合会は2003年、重大な人権侵害があったとして首相に遺族への謝罪や原因究明を求める勧告をした。これに政府はこたえていない。今年5月には政府の関与を前提とした「遺憾の意」表明の予定はない、との答弁書を閣議決定している

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小池百合子都知事が朝鮮人犠牲者追悼式に追悼文を送ることを取りやめた。なぜなのか明確な説明はない。ヘイトスピーチがやまない時代。熊本地震ではツイッターで「朝鮮人が井戸に毒薬を投げ込んだ」とデマが拡散された。戒めを共有できない社会は歴史を繰り返すように思えて怖い。

(9月1日)

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