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阿部知事7年 「県民起点」といえるのか

 阿部守一知事の2期目の任期があと1年になった。

 1期目は「県民主権」、2期目は「県民起点の県政」を掲げ、県政への県民参加を重視する姿勢を示してきた。

 県政タウンミーティングなど県民と直接対話する機会を続けてはいる。だが、事業の実施に当たって県民の意見を十分反映させているかには疑問符が付く。

 「県民主権」の象徴だったのは1期目に始めた「信州型事業仕分け」だ。仕分け人の一部を公募、無作為抽出で選ばれた県民が判定人を務めるなどして、事業の要不要を熱く議論した。

 しかし、自民党などに反対されわずか2回で廃止。事業の必要性の是非よりも、推進のための実効性向上に力点を置いた「県民協働による事業改善」に衣替えした。傍聴する県民は減り、県政への関心を高める意味は後退した。

 2期目も県民参加のあり方が問われる場面が目立つ。

 例えば、地方創生に向けた「地方版総合戦略」の策定過程。県庁内の会議で出た案をまとめ300項目もの事業を詰め込んだ。各界や県会の代表の意見を聞き、最後にパブリックコメント(意見公募)で微調整するお決まりのパターン。地域を知る住民に積極的に関わってもらおうとワークショップ(参加型講習会)を重ねた自治体とは対照的だった。

 阿部県政で目を引くのは「箱物」の建設推進だ。来年4月に開学する県立大の設立(108億円)、佐久市への県立武道館建設(50億円)、長野市の信濃美術館の全面改築と併設の東山魁夷館改修(計110億円)と続く。

 阿部知事は、緊縮財政を採った田中康夫県政以降、「必要な投資が行われてこなかった」と指摘する。だが、県財政は決して楽観できる状況にない。

 県が2月に公表した中期財政試算では、高齢化による社会保障関係費の増加などで2021年度には財源の不足額が108億円に膨らむ。こうした財政状況や将来負担を含め箱物建設に県民合意が得られているといえるだろうか。

 特に武道館は、建設を決めた昨年の県民世論調査で建設反対が賛成をやや上回っていた。自民党や武道団体の要望を優先したとみられても仕方がない。

 知事は先日の記者会見で2期目の公約の「約8割は一定程度、取り組むことができた」と自己評価した。それらが県民起点に基づいているのか。原点に戻って検証し直してほしい。

(9月2日)

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