長野県のニュース

斜面

見てよし作ってよし演じてよし―とは、先日長野市で開いた「全国紙芝居まつり」で感じた紙芝居の魅力だ。子どもらが叫び声を上げて夢中になる。アドリブを交えて会場を沸かせる演じ手と見る人との間には、温かな触れ合いがある

   ◆

昭和初期に街頭から生まれた庶民文化だ。「黄金バット」が人気を呼び、戦後のブームもあったが、テレビの普及とともに衰退した。ところが保育所や学校だけでなく介護でも見直されつつある。喜ぶ高齢者が多く、コミュニケーションに役立つという

   ◆

「0〜100歳」という愛好者の幅広さを、まつりの分科会で示したのが山ノ内町の松田れい子さんだ。紙芝居誕生より一回り以上も上の103歳。町内の言い伝えや昔の温泉場の様子、体験などを物語にして絵を描き、演じている。施設慰問や催しに引っ張りだこの現役である

   ◆

きっかけは夫の復員後に始めた温泉街の雑貨店で子どもらを喜ばせるためだった。いろり端で祖母に聞いた話をすれば情操教育になるだろうとの思いもあった。町内にこだわった作品は50余り。題材にする所を訪ね、想像を膨らませるのが楽しいという

   ◆

「この年になっても大勢の前では緊張するのよ」と言いながら、分科会では謡曲で鍛えた張りのある声で民話を演じてくれた。紙芝居は1人でしゃきっと暮らす松田さんの生きがいになっているようだ。想像力をかき立て、共感を生む、もっと見直されていい昭和の双方向メディアである。

(9月3日)

最近の斜面