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事故1年前「2人操縦士制を」 県防災ヘリ 死亡隊員ら要望

県消防防災航空隊の隊員が県消防課などに「ダブルパイロット制」の導入などを求めた文書の一部(画像を一部加工)県消防防災航空隊の隊員が県消防課などに「ダブルパイロット制」の導入などを求めた文書の一部(画像を一部加工)
 3月の県消防防災ヘリコプター墜落事故で死亡した県消防防災航空隊の隊員らが事故の約1年前から、安全対策として機長席と副操縦席にパイロットが搭乗する「ダブルパイロット制」の導入を、県危機管理部に求めていたことが4日、信濃毎日新聞が入手した内部文書や関係者の証言で分かった。隊員らはパイロットの養成にもつながるとして必要性を訴えたが、実現しないまま事故は起きていた。

 ダブルパイロット制は、機長の操縦ミスや体調不良への対応ができ、障害物や計器類を複数で確認できる利点がある。今回の事故時に搭乗していたパイロットは1人。県は事故後、ダブルパイロット制導入を運航再開に向けた安全対策の柱として打ち出した。国内最悪規模のヘリ事故から5日で半年。遺族らは、安全対策の確立を強く求めている。

 隊員らが同部に提出した150枚近い文書を入手し、関係者を取材した。文書は県への情報公開請求では「個人情報に当たる」として非公開となっている。

 文書などによると、昨年3月ごろから、複数の隊員が要望を始めた。航空隊には当時、パイロットが3人いたが、2人は防災ヘリの操縦は「訓練中」のレベル。死亡したベテランの機長岩田正滋さん=当時(56)=1人に負担がかかる状況を改善し、訓練中のパイロットを副操縦席に乗せて養成を図るよう求めていた。

 ある隊員は3月11日、要望書で「操縦士の疲労によるヒューマンエラー(人為ミス)が起きやすく、航空機事故につながりかねない状況にある」と指摘。ダブルパイロット制導入で「2重の操縦チェック態勢とすることができ、安全運航維持のためには非常に有効で、必要な手段と考える」と提案した。

 この隊員は7月にも、ダブルパイロット制は「他のヘリ運航組織でも一般的に行われている訓練手法」として導入を促す文書を提出。同じ頃、事故で死亡した隊員の1人が、パイロット1人での運航の問題点を指摘する文書を出した。さらに9月には、別の事故死した隊員が「全ての機体運航において、○○氏(訓練中のパイロット)を副操縦席に搭乗させること」を文書で求めた。同部への要望は12月ごろまで続いた。

 だが、訓練中のパイロットを副操縦席に乗せるのは、一定以上の技術を身に付けてからにすべきだ―といった意見も航空隊内にはあり、いったん計画されたダブルパイロットでの飛行が複数回中止になったという。副操縦席には整備士が座る状態が続いた。

 同部消防課の花岡徹課長は取材に、同部としても訓練時のダブルパイロットの実施を促したと説明。一方で「当時は副操縦席に訓練中のパイロットを乗せるのが良いかどうかの見極めができなかった」としている。

 唯一の防災ヘリを失った県は来春、リース機を使い、民間航空会社と共同で運航を再開する方針。訓練中のパイロットも副操縦席に乗せダブルパイロット制の導入を目指している。

(9月5日)

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