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ナガサキアゲハ 生息確認数 増加の傾向 飯伊

井原さん宅の庭先で確認されたナガサキアゲハの幼虫=4日、飯田市上郷黒田井原さん宅の庭先で確認されたナガサキアゲハの幼虫=4日、飯田市上郷黒田
 飯田下伊那地域でチョウやガを研究している日本鱗翅(りんし)学会信越支部長の井原道夫さん(77)=飯田市上郷黒田=が、九州など温暖な地域に生息するチョウ「ナガサキアゲハ」の生息調査を続けている。2003年に下伊那郡天龍村で羽の一部を発見して以来、毎年調べており、飯伊地域の確認数は増加傾向にある。今年は自宅庭でも初めて幼虫を確認。地球温暖化による生態系の変化の一端とみられ、専門家も調査に注目している。

 ナガサキアゲハは、成虫になると羽を開いた大きさが10センチ前後になる大型のアゲハチョウ。南方から生息域を北に広げており、03年9月に井原さんが天龍村で羽の一部を見つけたのが県内での最初とされる。井原さんは同年、生息調査を本格的に始めた。

 6〜12月に飯田下伊那6市町村の計約40カ所を歩き、発見した卵と幼虫、さなぎの数を記録。天竜川と木曽川に沿って県内に入ってきているとみて、07年からは木曽地域の2カ所にも調査範囲を広げた。昨年は開始以来最多の幼虫112匹とさなぎ5個を確認。年によって増減はあるものの、「分布域を広げつつあることは確か」と話す。

 今年8月末には、初めて自宅庭のユズの鉢植えで幼虫11匹を見つけた。うち7匹が4日までに体長4センチほどに育った。緑色の体に白い帯状の模様があり、主にかんきつ類の葉を食べるのが特徴という。

 井原さんによると、幼虫はこれまで10〜11月に見つけることがほとんどで、大半がさなぎになる前に低温で死んだとみられる。ただ、目撃例は少ないものの、5月にも成虫が見られたことなどから、越冬している可能性もある。自宅の庭で見つけた幼虫もあと1週間ほどでさなぎになる見通しで、越冬の可能性が高いとみている。

 井原さんは、まだ個体数が少ないこともあり、分布拡大で食草が食い荒らされるなどの心配は少ない―とみる。今後も調査を続ける考えだ。

 県環境保全研究所(長野市)の須賀丈主任研究員(昆虫生態学)は「ナガサキアゲハの分布拡大は、地球温暖化との関連について研究が進んでいる」と指摘。長距離移動ができるチョウは、アリや甲虫類などに比べて短期間で分布域が変わりうるとし、「井原さんの調査は、記録による実態把握を進める上で価値がある」と評価している。

(9月5日)

長野県のニュース(9月5日)