長野県のニュース

ベネズエラ 火種をまき散らす恐れ

 南米ベネズエラの混乱が見過ごせない状況になってきた。

 国民生活は困窮し、国家財政も行き詰まっている。そんな状況なのに、マドゥロ大統領は独裁体制を固め、国民の不満や批判に背を向けている。

 マドゥロ氏は厳しい現実を直視すべきだ。国が破綻しかねない経済危機からの脱却を最優先課題とし、強権的な政治手法を改めなくてはならない。

 ベネズエラの原油埋蔵量は世界トップクラスで、輸出収入の9割以上を石油に依存している。20世紀後半は二大政党が政権を担ってきた。1999年に発足したチャベス前政権は政策を転換。社会主義的な政策を推し進め、外交では反米姿勢を強めた。

 2013年に大統領に就任したマドゥロ氏はチャベス路線を継承したが、原油価格の低迷が直撃した。石油収入に頼ったばらまき政策と経済の多角化を怠った付けが回り、生活物資の不足と物価高騰が深刻化している。

 国民の不満を背景に、野党は2年前の総選挙で3分の2を超える議席を獲得した。これに対し、政権側は民意や国会の決定を無視した。今春から反政府デモが頻発するようになり、衝突などで多くの死傷者が出ている。

 この事態にマドゥロ氏はとんでもない手を打った。制憲議会の選挙を行ったのだ。本来は新しい憲法を制定するために招集される議会で、行政、立法、司法の三権を上回る決定権を持っている。マドゥロ氏は新憲法の具体像を国民に示してはいない。政敵を排除する目的だったとの見方が強い。

 事実、制憲議会は先日、国会の権限を剥奪する決定をした。行政や司法を意のままに操ってきたマドゥロ氏が独裁体制を確立したことを意味する。

 しかも、制憲議会選挙は政権側による不正が疑われている。ベネズエラの民主主義はもはや機能しているとは言えない。

 米国のトランプ政権は選挙強行を非難し、マドゥロ政権に対する制裁を始めた。軍事介入を排除しない考えまで示している。

 ベネズエラに厳しい態度を示してきた中南米諸国も、トランプ政権には反発した。米国が「裏庭」のように中南米に介入してきた歴史に対する反感が今も根強く残っているからだ。

 マドゥロ政権は米国の侵攻に備えた大規模な軍事演習に踏み切った。一歩間違えば、国際社会を大きく揺さぶる問題に発展しかねない危うさがある。

(9月6日)

最近の社説