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化学プラントの会社に入社して2年目、24歳の男性は設備の補修などを監督する仕事を任せられた。38日間も連続で働き、月の残業が200時間に及ぶ過酷な勤務。加えて年長の作業員への気遣い。心身ともに疲れ果て自ら命を絶った

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ブログを書いていた。会社を辞めたいと訴えつつ自分の苦悩を〈先輩の忙しさに比べればちっぽけなもの〉と言い聞かせた。こんな言葉も残している。〈駄目だな、自分自身。会社に迷惑かける前に、早いとこ星にならないと〉=川人博著「過労自殺」

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人手が足りず理不尽な要求なのに拒めない。その葛藤が痛々しい。トラックで県内を走り回ってコンビニに商品を配送していた長野市の43歳の男性は1月、荷物を引き渡した後に駐車場で倒れた。急性大動脈解離だった。亡くなる直前の1カ月の時間外労働は114時間に上った

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食事の時間もなく80代の母が作ったおにぎりを食べながら運転していた。体重は約8キロ減少。常に疲れた様子で表情も暗かったという。〈寡黙でしたが、働き者でやさしい性格でした〉。労災に認定され母親が出したコメントからは痛切な思いが伝わる

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企業の労務管理が問われるにしても、背景の構造に目を向けたい。チャプリンの映画「モダン・タイムス」(1936年)は人間を疎外する機械文明を風刺した。現代は宅配業界の問題にも現れているように、便利さを際限なく提供するサービス競争の社会が人間らしさを奪っていないか。

(9月7日)

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